My Recommend Album

  

ママおすすめの一枚を、毎月紹介していきます。

(2017年5月で更新終了しました)

 

 

2017年5月

"A Great Day In Harlem"(DVD)

 

先週来たお客さんがお店の壁に貼ってある写真

(ハーレムでジャズミュージシャンが集まって撮った)

を語るDVDを持って来てくれた。

こんな大勢のミュージシャン達が集まったのは

エスクァイア誌の呼びかけだった(58名)。

時は1958年、ジャズが最も大きく伸びていった年。

それぞれのミュージシャンのことが細かく解説され

とても参考になった。セシル・テーラーがいない?

これは何度もくりかえしみていきたい。

 

 

2017年4月

"Charlie Parker On Dial Vol.1"

 

今月もまた、チャーリー・パーカーのダイヤル盤です。

それもダイヤルのVOL.1のみ毎朝アナログで聴いている。

パーカーがわかればジャズがわかる

という言葉ずい分前から知っていた。

今週は何の知識にも頼らず

全神経を傾けて聴くことに集中している。

どこまで続けば本当に自分のものになるのか。

パーカーのアドリブは何度聴いても胸がぐぐっとくる。

この分厚いアルトの音が耳から離れない。

 

 

2017年3月

"Charlie Parker On Dial Vol.1"

 

チャーリー・パーカーの

ダイアル・セッション(VOL1)を聴く。

何十年前かに聴いていたときとは又

違ったものが見えてくる。

パーカーは天才なるが故に

孤独だったのだと。

ファーストテイクが一番いいと思っても

サイドが何度もくりかえさないと

同じレベル迄あがってこない。

しかしパーカーはきらめくようなソロを…。

倒れる直前のラバーマンセッションすごい !!

 

 

2017年2月

"bird is Free" Charlie Parker

 

今月はまたまたチャーリー・パーカーの

"バード・イズ・フリー”です。

やはり好きなアルバム、手が伸びる。

深夜にジャズナイトで

パーカーを聴いてこのアルバムに決めた。

もう音が悪くても、楽器が借り物でも

何でもいい。

しかし”マイ・リトル・スエード・シューズ”、

もうめちゃくちゃにいいです。

 

 

2017年1月

"Marty Paich Quartet featuring Art Pepper"

マーティ・ペイチ・カルテット・フィーチャリング・アート・ペッパー 

 

このアルバムは昔よく聴いた。

今この時代、改めて聴いているが

1956年のこのアルバムの中での

A面最後の"オーバー・ザ・レインボー”、

消え入るようなはかなさを持った

ペッパーのアルト今聴いても

胸を打つ !!

ペッパーはその後再起して力強くなった。

私はこの時代のペッパー大好きです。

 

 

 

2016年12月

"Another workout" Hank Mobley

今月の一枚はハンク・モブレーの

”アナザー・ワーク・アウト”です。

未発表だったこのアルバム、

数ある作品の中で一番心に残った。

控えめな哀感がたまらない。大好きです。

しばらく休んでいたブルーノートの再会パーティ、

80年代、はなやかなその雰囲気に、

外で立ちつくしていた淋しそうなモブレーを

うつしだしていた。

 

 

2016年11月

"Bud Powell in Paris"Bud Powell

今月の一枚は”バド・パウエル・イン・パリ"です。

毎朝一枚50年代・60年代を聴き直していて、

改めてパウエルのすごさを感じている。

闇を突き抜けていく音の世界から

晩年のパウエルのこの一枚となった。

昔からこのなかのディア・ストックホルムという

曲が好きだったが、今改めて聴いてみて

しみじみとした心境に、しかし胸に迫る思いです。

 

 

2016年10月

"Blue's Moods" Blue Mitchell

今月の一枚はブルー・ミッチェル"ブルース・ムーズ”です。

この人のこのアルバム、前からいいなーと思っていた。

改めて"When I fall in love"を聴く。

バラードの中でも抜群、全然違う。

飾りも何もなくそのままそっと吹いている。

ほんとうに恋に落ちたかのよう…。

胸がいっぱいに…。

この"When I fall in love"が最高です。

この人のアルバムはこれしかないと思っている。

ジャケも素朴でいい、昔の映画思い出す。

 

 

2016年9月

"Eternal"Branford Marsalis

今月の一枚はブランフォード・マルサリスの

”エターナル”です。

スペインで聴いたライブ、この人から

書いていこうと思う。

弟ウィントン・マルサリスと比べられて

ちょっと影が薄いと思われていたけれど

いやいやこの人の柔らかな感受性…。

とても好きになりました。

特に最初の曲 "The Ruby and The Pearl"

思わず引き込まれました。

彼の真髄はこれだと思います。

 

 

2016年8月

"Black Fire"Andrew hill

今月の一枚はアンドリュー・ヒルの”ブラック・ファイア”です。

ずっと前に彼の"Judgment"(ジャッジメント)という

アルバムを取り上げたことがあった。

ちょっと屈折した、つまづくような彼のピアノと

ジョー・ヘンダーソンの、のたうつような

テナーがすごい。

今聴いてもぐっときます。ジャケも最高(ブルーノート)。

もっと活躍してほしかった。

 

 

2016年7月

今月の一枚はピート・ラロカ”バスラ”です。

ピート・ラロカはパリのライブハウスで

初めて聴いた。

そのときはあまり知らなくて

あとで60年代ずいぶん活躍した人だと知った。

不遇な時代にNYでタクシーの運転手をしていた。

あのドラムの響き、今も思い出す。

こんな素敵なアルバムを残していった。

今はもういない。

 

 

2016年6月

今月の一枚はビル・エヴァンスの

”ポートレート・イン・ジャズ”です。

我が店の看板にもなっているビル・エヴァンス。

日本で特に人気があるけれど

彼はただの名ピアニストだけではない。

今までのピアノトリオのあり方を変えてしまった人。

これがエヴァンスの凡て。

他のことはどうでもいい。

聴きやすいジャズだと思っていたらとんでもない。

20年聴いても、50年聴いても新しい。

ビル・エヴァンスは永遠です。

 

 

2016年5月

今月の一枚は、”ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ”です。

前にも書いたことがあったと思うが、

このセシル・テイラーがソロをとる

トラックに胸がつぶれそうになります。

分厚いオーケストラのサウンドの中を

切り込んで炸裂するセシル・テイラーのピアノ。

何度聴いても圧巻です。

いつまでも現役でいてほしい。

終始スタイルの変らない、フリー界の帝王!!

 

 

2016年4月

"マイ・ソング”キース・ジャレット

今月の一枚はキース・ジャレットの”マイ・ソング”です。

CDの整理をしていたら前から探していた

このアルバムが出てきた。

女の子が二人路上で仲良く並んで立っている。

買った覚えがないのに妙に記憶に残っていた。

キース・ジャレット(P)、ヤン・ガルバレク(T),

パレ・ダニエルソン(B)、ヨン・クリステンセン(D)みんないい。

凡てキースの曲、マイソングのテナーが心に残る。

 

 

2016年3月

”ディア・ロード”ジョン・コルトレーン

 

今月の一枚は前にも書いたと思うが、

コルトレーンの”ディア・ロード”です。

いろいろなバージョンがあるようだが、

”トランジション”に入っている

たった5分のこの曲が一番好きです。

コルトレーンの凡てがわかるような気がする。

今聴いても本当にぐっと胸があつくなる。

この曲に出逢えてジャズのすばらしさを知った。

 

 

2016年2月

”私の考えるジャズ” クインシー・ジョーンズ

 

昨年、クインシーはモンク・コンペティションの

スピーチで「ジャズは、凡てのポピュラー

ミュージックにとっての心と魂」と言った。

この財産を失くしてしまうことはできないと。

この音楽を守り広めるため最前線で努力しようと。

飛ぶ鳥を落とす勢いでポップスの世界に行ってしまった、

クインシー・ジョーンズ、見直しました。

本当にジャズは、凡てのポピュラーミュージックに

とっての、心と魂です。

 

 

2016年1月

The Jazz Composer's Orchestra/ Cecil Taylor

 

今月の一枚はセシル・テイラーの

”ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ”(1968年)。

60年代のフリージャズが最高に刻まれた

圧倒的な演奏です(前にも書いたと思う)。

セシル・テイラーがソロをとるシーンがすごい!!

もう何も言えません!! 胸がふるえます。

セシル・テイラーはフリージャズ界の帝王、

最後まで。

 

 

2015年12月

フィル・ウッズ”ヨーロピアン・リズム・マシーン”

 

9月29日に83歳で亡くなったフィル・ウッズ。

この人のアルバムを聴いていると胸が熱くなって

”青春”という思いがぐっとよみがえってくる。

熱いものが胸をよぎる。

パーカーの後継者と言われて最後まで

現役であり続けた。

パーカーの死後、パーカーの彼女と結婚したことも

すべて情熱的、この作品も燃え上がるようです。

 

 

2015年11月

“ジャズの巨人マイルス・デイヴィス”

 

小学館から”ジャズの巨人マイルス・デイヴィス”

というCD付の雑誌が送られてきた。

マイルスの歴史をたどったもので、この中に

”When I fall in love”(1956年)が入っていた。

ブルー・ミッチェルのこの曲が一番好き

だったがマイルスの曲とくらべて

ミッチェルのストレートな吹き方もいいが、

情感あふれるマイルスのミュートをつけた

トランペットにぐっときました。

 

 

2015年10月

"Carmen Sings Monk" CARMEN McRAE

 

今月の一枚はカーメン・マクレエの

”カーメン・シングス・モンク”です。

このアルバムは昔からあったのだが…。

何気なく聴きすごくいいなと思い何度も聴きかえした。

モンクの曲をすべて歌っているのだが、

これを取り上げて歌った勇気と自信、すばらしい !!

1988年ニューヨークとサンフランシスコでレコーディング。

改めてアメリカを代表する3大歌手の一人としての

実力を知った。

 

 

2015年9月

Roscoe Mitchell "Live at A Space 1975"

 

今月の一枚は、ロスコー・ミッチェル(ts)カルテットの

"Live at A Space 1975"です。

とても若い頃のロスコー、びっくりしたのは

コルトレーンの”ネイーマ”をやっている。

これがいいのです。わずか3分ほどの

ソロ演奏ですが、とてもいい !!

そのままに吹いている、自然そのままに。

こんな時代もあったのだと、改めて

前衛集団アート・アンサンブル・オブ・シカゴの

最後の一人、ロスコーを聴きなおした。

 

 

2015年8月

Muhal Richard Abrams "Young at heart/wise in time"

 

JAZZの未来に向かって突き進む、

ムハル・リチャード・エイブラムズ(p)と

シカゴの前衛集団AACM。

(クリエイティヴなミュージシャンの向上のための協会)

リチャード・エイブラムズは以前

スペインとオーストリアで聴いたが、

AACM総出演となる、9月のシカゴジャズフェスに

行くのを楽しみにしている。

エクスペリメンタルバンド50周年を迎えて !!

 

 

2015年7月

Art Farmer "When Farmer met Gryce"

 

アート・ファーマー/ホエン・ファーマー・メット・グライス

この地味なアルバムを毎晩一ヶ月聴いた。

最初は全然盛り上がりのない、

どうってことないアルバムと思っていたが、

いやいや聴きすすむうちに、2人のコンビの

面白さがさりげない演奏の中に

深く深く、感じられるようになった。

ジャケットの素晴らしさに偽りなし。

 

 

2015年6月

Ornette Coleman "Chappaqua Suite"

 

今月はオーネット・コールマンの“チャパカ組曲”です。

6月11日オーネット・コールマンが亡くなった。85歳。

今までオーネットのアルバム、いろいろ聴いてきたが、

このアルバムを聴いて、音楽が宇宙に拡散して、

拡がっていくような、ふあっとした気持ちに…。

全然難しくない。オーネットのアルバムの中で一番好きです。

 

 

2015年5月

"Phil Woods and his Europian Rhythm Machine"

 

今月の一枚は、フィル・ウッズとヨーロピアン・リズム・マシーンです。

今月は何にしようかとアルバムを探していたら

これにぶつかった(前にも書いたかもしれない)。

解説も何もいらない。

 

何回聴いても胸が熱くなる!!

フィル・ウッズ(as)、ジョルジュ・グルンツ(p)、アンリ・テクシュ(b)、

ダニエル・ユメール(d)、皆、文句なしにいい。

これからはこんな聴き方でいこう。

 

 

2015年4月

Thelonious Monk "Thelonious Alone in San Francisco"

 

今月の一枚は”アローン・イン・サンフランシスコ”

セロニアス・モンクです。

最近モンクに少し近づいたような気がする。

このアルバムは1959年(リバーサイド最後の作品)

57年のソロアルバムよりずっと深く深く感じられる。

秀逸なジャケット、モンクのハッピーな笑顔 !!

(リフレクションというモンクの曲、好きです)

 

 

2015年3月

Dusko Goykovich"Balkan Blue"

 

デュスコ・ゴイゴビッチ”バルカン・ブルー”です。

このアルバムの中に入っている最後の曲

“ユード・ビー・ソー・ナイス”に入っているジャンニ・バッソ

(伊、ts)すごくいい、そっと入ってくる感じ絶妙です。

 

 

2015年2月

Gil Cuppini "What`s new"

 

今月の一枚はジル・キュッピーニ(ds)の”ホワッツ・ニュー”です。

デュスコ・ゴイゴビッチ(tp)、バルネ・ウィラン(ts)、

ジョルジュ・グルンツ(スイス、p)の3人が素晴らしいです。

これから胸がおどるようなアルバムを探していこう。

 

 

2015年1月

Thelonious Monk "Thelonious Himself"

 

今月の一枚はセロニアス・モンクの”セロニアス・ヒムセルフ”(1957.4)。

ブリリアント・コーナーも何回も聴いていこうと思う。

村上春樹の「モンクのいる風景」の中の、ハイライトを一本くれと

安西水丸に近づいてきたモンクのエピソード、とてもモンクらしい。

 

 

2014年12月

John Coltrane "Transition"

 

今月の一枚は迷いに迷って結局このアルバムに決めました。

前に取り上げたことがあるかもしれない。

このアルバムの中にある“Dear Lord”が凡てです。

無理に今月の一枚、何かないかと探すのではなく

究極のこの一曲、何度でも書いていこうと思う。

この一曲でコルトレーンの凡てが判るような気がする。

初期の頃のすがすがしい清純さから、

最後にたどり着いた、洗い清められたような神への道…。

”Dear Lord" たった5分ほどの曲、

嵐の過ぎ去った後の静かな祈り、言葉では言い表せない。

この心境になれたコルトレーン、幸せです。

ジャズは無限、これでいいということはない。

(来年からもっと簡潔に書いていこうと思う)

 

 

2014年11月

"Solo on Vogue" Thelonious Monk

 

今月の一枚は、セロニアス・モンク"ソロ・オン・ヴォーグ"です。

初めてのピアノ・ソロアルバム、ヴォーグ・レーベル(パリ)1954年。

大勢でやるのもいいが、ピアノソロが一番モンクらしいと思う。

強烈な個性の持ち主モンクは、長い間不遇をかこっていたけれど、

リバーサイドに移り、オリン・キープニュースのプロデュースに

よってその価値を認められ、一般に知られるようになった。

モンクは死ぬまでの数年間はほとんど演奏活動を停止していた。

健康がすぐれなかったと言われているが、ややうつ病的な所が

あってのことらしく、ピアノを弾くことも作曲することもなく、

ぼんやり椅子に座って一日を過ごすことが多かったようだ。

享年64歳。作品は初期の頃にほとんど創られていたようだ。

認められなくても認められても、自分流に生きつづけた。

魂を揺さぶるような真のジャズ、何回でも聴いていこう。

 

 

2014年10月

"At The Five Spot Vol.1" Eric Dolphy

 

最近お客さんのリクエストで改めて聴いて

今さらながら胸が躍るような気がした。

前にも書いたかもしれないがこの有名なアルバム、

最初の出だしからドルフィーとリトルとの烈しい

ぶつかりあい…言葉ではない…理屈でもない…。

ジャズは解説やその他もろもろの知識を

知るのではなく、音そのもので聴き分けたいと

思っている、いろいろな裏話を知らなくても

音楽だけを純粋に聴いて、自分のものにして

いきたいと思っている。しっかり頭の中に…。

ドルフィーのこと何にも知らなくても

一回聴いただけですごいと思ってしまうように。

若しもっと彼が長生きをしていたら、もっと

すばらしいものを残したかもしれないと思う。

しかし、ドルフィーは37歳で死んだ、それが凡てです。

 

 

2014年9月

"Full House" Wes Montgomery 

 

今月の一枚は前にも書いたかもしれないが

ウェス・モンゴメリーの”フルハウス”にします。

先日お店が終わる頃来店した若い二人の男性が

フルハウスをかけてくださいとリクエストした。

POSYのホームページを見ていたら、おすすめ

リバーサイド10枚の中に入っていたので

アナログで聴きたくなったと言っていた。

何度聴いてもいいですねえ、大好きな一枚。

やはり黒人でなければ出せない味。

オクターブ奏法が有名だが、アメリカの片田舎で

5人の子供を育てるため昼夜力仕事をして

寝る間もなく好きなギターを弾いていたというウェス。

ジョニー・グリフィン、ウィントン・ケリー、

ポール・チェンバース、ジミー・コブ…。

ライブハウスでお客と一緒になって弾いているウェス。

このアルバムのジャケ裏の写真、とても臨場感があっていいです。

 

 

2014年8月

"Liberation Music Orchestra" Charlie Haden

 

今月の一枚はチャーリー・ヘイデン

”リベレーション・ミュージック・オーケストラ”です。

ずっと前から聴いているが、先日ヘイデンの訃報を知って

改めて聴いた。彼はいろいろな作品をつくっているが

このアルバムが一番強烈に迫ってくる。

ヘイデンは1936年に起こったスペイン市民戦争のことを

あるきっかけで知った。

この悲劇的な戦い、凄惨な戦いのなかに、

人々の命の叫びを強く感じ、動かされた。

(ピカソの絵「ゲルニカ」はこの時のもの。虐殺された村人達 !!)

50カ国もの人々が、自由を得るために、この戦争に参加した。

(ヘミングウェイも義勇兵としてアメリカから参加した事は有名)

ヘイデンはスペイン戦争をテーマに、カーラ・ブレイらと

このアルバムをつくった。決して政治性を強調せず、

一人のミュージシャンとして、純粋に、感じたままを表現した。

ここに集った13人のミュージシャンも志は同じ。

ジャケットもいい、胸が熱く心高まる名作です。

 

 

2014年6月

"Gettin' Around" Dexter Gordon

 

今月の一枚は“ゲッティン・アラウンド”デクスター・ゴードンです。

今月もいろいろ聴いたのだが結局このアルバムに。

前にも書いたかもしれない。今回は聴き直してみて

このアルバム、前にもましてすごく好きになった。

最初、“黒いオルフェ”から始まるのだが、いいですねえ。

リラックスしたムード、親しみやすく、悠々せまらぬ大らかさ、

いろいろな人がこの曲をやっているが、彼の演奏は、

とても心に残る、印象的で大好きな曲です。

メンバーも粒ぞろいでボビー・ハッチャーソン(vib)、

バリー・ハリス(p)、ボブ・クランショウ(b)、ビリー・ヒギンス(ds)、

皆いい、デクスターからは風格のようなものを感じる。

1965年5月レコーディング、この頃のジャズって未だ

落ちついていて、最近とてもいいなあと思うようになった。

私はこの時代が一番好きなのかもしれない。

胸がふるえる位の曲に、あとどれだけ出逢えるだろう。

 

 

2014年5月

"Levels and degrees of light" Richard Abrams

 

今月の一枚はリチャード・エイブラムズの

”レヴェルス・アンド・ディグリーズ・オブ・ライト”です。

これは1967年彼の初リーダー・アルバム。

この時代すでにこれほどオリジナルで

ラディカルな音楽を創造していたとは。

(”バード・ソング”すごいという言葉では言い表せない)

私の最も尊敬しているリチャード・エイブラムズ、

前衛ジャズ、シカゴAACMの代表です。

2年前オーストリアのザールフェルデンジャズフェスで

偶然聴いた、十数人ものミュージシャンを率いて、

あの山の中、80歳を過ぎてもかくしゃくと演奏していた。

インタビューにも気軽に答えてやさしそうだった。

彼の音楽への情熱、若者への影響、例えば

アンソニー・ブラクストン、ロスコー・ミッチェル、

ジョセフ・ジャーマン等がいる。

最近アンソニーが賞を得た時も、喜びのコメントを送っている。

次のフェスティバルで逢えそうだ、その時は、

"You are great !!" と思い切り言います。

 

 

2014年4月

"John Surman, Jack Dejohnette live in Tampere and Berlin" 

 

今月の一枚はジョン・サーマンと

ジャック・ディジョネットのライブです。

ずっと前にジョン・サーマンが好きだと言ったら

このCDを送ってくれた人がいた。

ECMだということ以外全然わからなくて、

ライブであることは聴いていてわかるが、

何年のレコーディングなのか、

多分2000年過ぎての作品だと思う。

さすがバリトンサックスだけでなく、ソプラノが

殆どだが、サーマンの情熱は少しも衰えていない。

あの凄まじかった60年代後半と少しも変わってない。

相手がディジョネットだから、よけい燃え上がる。

ディジョネットも相性ぴったり、いいですねえ。

サーマンは今年ノルウェーを代表する賞を

カーリン・クローグと共演して受賞している。

今やノルウェーで最も尊敬されているミュージシャン。

アメリカに行かなくてよかったですねえ!!

 

 

2014年3月

"Phil Woods and his European Rhythm Machine at the Montreux jazz festival"

 

今月の一枚は”モントルージャズフェスティバルのフィル・ウッズと

ヨーロピアン・リズム・マシーン”です。

同じメンバーで又一段と甘美だけれどたくましく

バリバリと吹きまくるこの作品、改めて聴き直した。

すごくいい、とても胸が熱くなる…。

フィル・ウッズ(a)はシカゴで聴いたがその頃は

ビックバンドの一員だった。

ジョルジュ・グルンツ(p)、1963年に東京でオーケストラを聴いた。

ダニエル・ユメール(d)、フレンチジャズフェスを東京で聴いた。

アンリ・テキシィエ(b)、最近ヨーロッパのジャズフェスで聴いた。

50年代のフィル・ウッズが好きだという人が多いが、

69年のこのアルバムはすばらしい一枚です。

パーカーを尊敬するあまりパーカーの未亡人と

結婚してしまうほどの情熱家、フィル・ウッズ。

もう80才を越えている、大好きなミュージシャンの一人です。

 

 

2014年2月

"Thelonica" Tommy Flanagan

 

今月の一枚はトミー・フラナガンの“セロニカ”です。

前に一度このアルバム取り上げたことがある。

トミ・フラ(トミー・フラナガンのこと、こう呼ばれていた)の

イブシ銀のような魅力がいっぱいのアルバムだが、

今回は特に題名のセロニカ(セロニアス・モンクとニカ男爵夫人)

のこと書きたくなった。

このアルバムの裏側にモンクとニカ夫人が

セントラルパークをバックにたたずんでいる写真がある。

この二人のフォト、大好きなのです。すてきです !!

ニカ男爵夫人はモンク、パーカーを始め多くのミュージシャンの

生活を支えてジャズに貢献した素晴らしい女性。

トミ・フラがニューヨークのマンハッタンのライブハウスに

出演していた時、ニュージャージー州から会いに来た。

もう晩年で一人では出かけられない程だったという。

ニカ夫人はジャズ史に残る永遠の人、このフォト大きくしよう。

 

 

2014年1月

"Swinging Macedonia" Dusko Goykovich

 

今月の一枚は何にしようか迷っていたら

夜遅く来店したお客さんがダスコ・ゴイコビッチの

スインギン・マケドニアをリクエストした。

忘れてはいないダスコ・ゴイコビッチ、

私の好きな大好きなゴイコビッチ。

ジャケットもすばらしい、今月はこの一枚に決めた。

豊かな歌心と、ハートウォーミングな暖かさ、

メインストリームを貫きとおして‥。

やわらかい、でも芯のあるトーン‥。

やっぱり大好きです、もう20年も経ている、

お店に来店してくれたなつかしい思い出、

このアルバムと共に忘れません。

お元気だろうか、最後までやり続けてほしい !!

 

 

2013年12月

"Jazz Guitar" Jim Hall

 

今月の一枚は先日亡くなったジム・ホールの

“ジャズ・ギター”です。とても中身がすばらしい。

ビル・エヴァンスとのデュオ“アンターカレント”が

有名ですが、あえて1957年のこのアルバムを推薦します。

いやあ60年近く前のこのアルバム、いいですねえ。

若々しいジム・ホール、そしてカール・パーキンス(p)、

レッド・ミッチェル(b)、生き生きとしている。

ジム・ホールの笑顔、いつもマイペースで惹きつけていた彼、

たまたま大ヒットしたアランフェス、その後大御所になってしまった。

ブルーノートで握手したやわらかい右手の感触、

忘れません。誰にもこの音色は出せない。

ジムホールのジャズギター、永遠に‥。黙とう !!

 

 

2013年11月

"Live at nefertiti" Scott Hamilton Scandinavian Five

 

今月はスコット・ハミルトン・スカンジナビア・ファイブです。

先日神保町の某ジャズ喫茶に出かけたのだが、

私の好きな”ディア・オールド・ストックホルム”

(バド・パウエル・イン・パリ)をリクエストしたら、そのあと直ぐ

CDでスコット・ハミルトンのこの曲をかけてくれてびっくり !! 

すごいのです、「えっこれがスコット・ハミルトン」と叫んでしまいました。

そういえば児山さんの番組でもこの曲はスタン・ゲッツ

以来の歴史に残る名演になると紹介していたし。

知り合いの友達も去年の暮れ、生演奏でこの曲を聴き、

楽器が震えるほどテナーの響きが太く、たくましかったと言っていた。

ハミルトンはとても親日家、世田谷にも住んでいたことがある。

離婚して一回り大きくなったようだ。

(来週からもっとシンプルにこのコーナー書き続けます)

 

 

2013年10月

"Gettin' Around"(Dexter Gordon)

 

今月は、デクスター・ゴードン “ゲッティン・アラウンド”(1976)です。

最近あれもこれも聴き直してみたいと、たまたま取り出した

このアルバム、最初に聴こえてきた“黒いオルフェ”、そして

“エヴリバディーズ・サムバディーズ・フール”、本当にいいです。

ひきこまれました !! 最初聴いたときは回転数が

おかしいのかと思った位、ゆうゆうとリラックスしたアドリブ、

誰にもまねの出来ない風格のようなものがある。

1980年代、デクスターの来日を待ってチケットを

買っていたのだが、急に具合が悪くなり延期になった。

しかし必ず約束は守るからチケットはそのままに

していて待っていてほしいと‥。

3ヵ月後、来日したが痛々しいほどやせ衰えていた。

彼らしいジョークを飛ばしていたのが悲しかった。

その後間もなく亡くなった。

大好きなミュージシャンの一人です。

 

2013年9月

"Motion"(Lee Konitz)

 

今月の一枚はリー・コニッツ“モーション”にしました。

今年東京ジャズに出演したというので聴き直してみた。

やはりすごいなとあらためて思った。

このアルバムが一番の代表作だと思う。

コニッツはトリスターノスクールの優等生だった。

これは1961年の作品、ストイックな姿勢を頑なに、

情緒性は微塵もなく、原曲がわからなくなって

しまうほどのアドリヴの連続。

何十年たっても全然色あせないコニッツの名演です。

80年代だと記憶しているが吉祥寺の“曼荼羅”という

ライヴハウスでコニッツを聴いたことがある。

その頃コニッツはスランプの時代だったのだろう。

一人で来日していて日本人と共演していた。

メンバーを思い出せないが、全然良くなかった。

紆余曲折いろいろあったがこの作品は歴史に残ります。

 

 

2013年8月

"Now He Sings, Now He Sobs" Chick Corea(Roy Haynes)

 

今月の一枚は”ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス”

の中のロイ・ヘインズ(d)です。彼は代表作が少なく、

このアルバムも代表作ではないけどすごくいいのです。

ロイ・ヘインズは88歳、昔から歴史に残るような重要な

作品の中にサイドメンとして演奏していることが多い。

今年ニューポート・ジャズフェスで聴いた彼のイメージが

今まで抱いていたものとはだいぶ違っていたので

とてもびっくりした。彼はおとなしい性格で繊細な

ドラマーと思われてきたように思う。しかしここでは

ドラムソロが終わったかと思うとフロントに出てきて

とてもよくしゃべる。「ポストンから来た人~?」と

大声で聞いたり(自身がボストン生れ)、そして

何とタップダンスを披露、けっこううけていた。

最後までこの調子でド派手なシャツと帽子で

たたきつづけてください。

 

 

2013年7月

”Where Flamingos Fly" Gil Evans

 

今月の一枚はギル・エヴァンスの”フラミンゴの飛翔”です。

このアルバムは1971年にギルがテープに入れていたもので、

何故かお蔵になっていたが、多分ギルがレコード会社に

持ち込んで76年やっと陽の目をみたもようだ。

あの頃とても話題になったが今聴きかえしても

全然古くささは感じられずギル特有のカラフルな

サウンドが、何ともいえずすばらしい。バックの

エレクトリックサウンドも、ぴったりはまって違和感がない。

最も期待されていた、ビリー・ハーパーいいですねえ。

ギル・エヴァンスは生涯不遇だった。マイルスと

深くかかわっていたようだが、「あまりのことにセーターを

くれてやったよ」と云ったマイルスの一言は許せない。

どんなに恵まれなくても自分の道を貫いたギル、

1980年代マイルスとギルはそれぞれのバンドで来日したが、

両手を高く上げてしめくくったギル、断然ずばぬけていた。

 

 

2013年6月

”Urban Bushmen" Art Ensemble of Chicago

 

今月の一枚は、AEOCの“アーバン・ブッシュメン”です。

AEOC(アート・アンサンブル・オブ・シカゴ)、久しぶりに聴きました。

“ラジオのように”という、ブリジット・フォンテーヌが歌っている

レコードの中で何か普通のバックとは違うとても刺激的な

演奏をしていたのを聴いたのが始まりです。

それから1980年代の中頃だったと思う、AEOCが来日しました。

2回コンサートに行きましたが、ほんとうにすごかっったです。

休憩になるとミュージシャンはいなくなりますが、

観客がみんな前列に進み出て、たくさんの楽器が

置いてあるステージを喰い入るように見ていました。

あの顔一面のペインティングもあっと言わせましたが

ジョセフ・ジャーマン、ロスコー・ミッチェル、レスター・ボウイ、

マラカイ・フェイバーズ、ドン・モイエ‥、その演奏は熱く

JAZZの未来を充分に感じさせてくれました。

今も大音響で聴いています、AEOC“アーバン・ブッシュメン”!!

 

 

2013年5月

”Thelonica" Tommy Flanagan

 

今月の一枚はトミー・フラナガンの“Thelonica”です。

セロニアス・モンクとジャズミュージシャンの有名な理解者

ニカ夫人をつなぎ合わせたタイトルです。

トミー・フラナガンはパウエル派のピアニストと言われていて

控えめだが粒立ちのいい演奏が昔から大好きだった。

フラナガンのコメントによるとニカ夫人はネリー(たそがれの

ネリーという曲に出てくるモンクの奥さん)とその子供達に

経済的に多大の援助をした。

フラナガンは89年のニューヨークジャズフェスで聴いた。

ハンク・ジョーンズと一緒だったが共演するのではなく

ハンクの出演中客席のロビーに現われた。

今がチャンスだよと、一緒だった友達に言われたが

サインをもらうことをためらってしまった思い出がある。

大柄なモンクと小柄なニカ夫人が楽しそうに写っている

ジャケ裏の小さな写真、とてもすてき !!

 

2013年4月

”Kirkatron" Roland Kirk

 

今月の一枚はローランド・カークの“カーカトロン”です。

ずっと昔カークのアルバムの中ではこのアルバムが

一番好きだと云っていた人がいた。

中々聴けなくて今回ワーナーから初めてCDが出た。

案の定フュージョンの世界(1975年あたり)だった。

しかし“ジス・マスカレード”、聴いただけでじーんときた。

表面のポップスとは正反対のこの深みのある音。

こちらの心がかきたてられるような演奏。

この一音にカークの凡てが表現されているようだ。 

誰もまね出来ない、カークの行きついた世界を感じる。

カークの深淵の深さを知りたいと何度も聴く。

カークは一人でテナーとマンゼロ、ストリッチを一度に吹く。

目が見えないハンデが、より神経を研ぎ澄ます。

彼にしか出せない音、絶望や苦しみの中から得たもの。

それは何度聴いても胸を打つ、再度聴き直した。

 

 

2013年3月

”New Jazz Conceptions" Bill Evans

 

今月の一枚はビル・エヴァンスのニュージャズコンセプションです。 

このアルバムは、エヴァンスの最初のリーダー作で、

のちのセンシティブでリリカルなピアノプレイではなく、

実験的な新しい試みをしている。

エヴァンスはこの年(1956年)、ジョージ・ラッセルと

深くかかわっていて、いろいろ影響を受けていた。

昔渋谷のジャズ喫茶スイングで、エヴァンスとお兄さんが

会話をしながらピアノに向かってジャズのアドリブについて

話しているDVDを、見せてもらったことがある。

とても真摯に熱心に話している。30分くらいのものだったが、

もう一度見たいと思うほど印象に残っている。

彼はこんなふうに一生かかって追求していったのだろう。

このアルバム、最初にリリースした時800枚しか売れなかったとか。

スタンダードが多いがフリーを意識した重要なアルバムです。

 

 

2013年2月

”The return of Art Pepper"

 

今月の一枚は”リターン・オブ・アート・ペッパー”です。

大和明氏の”ジャズ歴史と名盤”という本を読み終えた。

今更ながらその膨大な資料と造詣の深さ、ジャズに

対する愛情と洞察力に、尊敬と感動を深くした。

誠実そうな人柄がしのばれる。生前一度お会いしたかった。

氏がこの本の中で胸を熱くしながら語っておられる

このアルバム、”ミーツ・ザ・リズムセクション””モダンアート”と共に

最高のインプロバイザーと賞賛しているその一部を紹介。

 

「その豊かな感受性の中からあふれ出る歌心、

リズムに対する乗りの見事ともいえる自然なスインギーさ。

天与の感覚と共に、そのフレーズと音色の底にひそむ

哀感やかげり、その陰影にとんだ情感あふれる

表情の機微にふれた時どうにもならない程

胸があつくなる想いがこみあげてくる」同感でした。

 

 

2013年1月

チャーリー・パーカー"オン・ダイアル Vol.1~6"

 

今月のアルバムはチャーリー・パーカーの 

"オン・ダイアル Vol.1~6"です。

大和明氏の“ジャズ”という本を読んでいて

パーカーの項で岩浪洋三氏(ジャズ評論家)を

痛烈に批判している文が載っていてびっくりした。

評論家は本来ビギナーを対象としてアルバムを

推薦すべきであって、パーカーのような偉大な

ミュージシャンのアルバムこそ、どれに耳を傾けるか

啓蒙するところから始めるべきだと、そのあと

凋落の烈しい晩年のものにもかかわっていくべきと。

私も始めから凄いのをすすめてしまって、引いてしまう

ビギナーもいると思うので、最初は入りやすい作品を

すすめてしまうこともときどきあるが、しかし評論家で

ある以上、あれもいい、これもいいというのではなく、

はっきりと、その作品の良し悪しを書くべき。

このアルバムは間違いなく、パーカーの代表作です。

 

 

2012年12月

"George Lewis at Dixieland Hall"

 

今月のアルバムは、"George Lewis at Dixieland Hall"です。

このアルバムは私のジャズの原点、1965年来日した

ジョージ・ルイス(cl)を間近で聴いているのです。

私の一番大好きな"Burgandy Street Blues"

一曲だけでももう胸がいっぱいに、言葉ではない、

胸がしめつけられるような、言葉はいらない、

敬虔な信仰心、土のにおいがする素朴な

やさしさ、この音楽に解説はいらない、

もうこれを聴いて何も感じない人とは

話したくない、ジャズの原点、ここからジャズの

歴史は始まるが、時代と共にジャズは変遷していく。

この一曲があれば‥、ジャズはこのままでいてほしかった。

これが全てです。昼は沖仲仕として働き、

夜はクラリネット奏者として、そんな生活の中から

この音楽が生まれた。このまま発展しなくてもよい、

1999年行った化石のような街、ニューオリンズを思い出す。

 

 

2012年11月

"The Jazz Composer's Orchestra"(JCOA)

 

今月の一枚はマイケル・マントラー(Comp、Arr)の

ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラというアルバムです。

この中のセシル・テーラーがものすごいのです。

前に書いたかもしれないけどまたまた

このアルバムのセシル・テーラーを選びました。

本当に何度聴いても胸が突き刺さるよう。

フリージャズのミュージシャンのサウンドの中を

ものすごい勢いで切り込んでいくセシルのピアノ。

そう、暴力的とどこかに書いてあったが、

そのとおり誰でも一度聴いたら忘れられない、

セシルの最高傑作だと思う。

60年代のフリージャズ、歴史の中に燦然と輝いている。

マイケル・マントラーはオーストリアの人、

自国に帰ってしまったがもっと評価してほしい。

 

 

2012年10月

"Miles Davis in Europe"

 

今月の一枚はマイルス・デイビス・イン・ヨーロッパです。

このアルバムは1963年南仏のアンチーブでのライブ、

ジャケがすごくかっこよくて気に入っています。

だけど中味はピアノとベースがフランス人らしく、

最初のMCを何度聴いても誰だか判らない。

ジョージ・コールマン(ts)とトニー・ウィリアムス(ds)は

はっきり聴こえるけれどハービー・ハンコックと

ロン・カーターはこの時期どうしたのだろう。

御大マイルスはごきげんにブロウしまくっています。

アンチーブは何年か前に訪れたところ...

パリから南へ列車で何時間乗っただろう。

ニースで乗り換えてやっとアンチーブへ、

地中海に面したピカソの別荘もある南仏の有名な避暑地。

それからセザンヌのアトリエがあるエクサンプロヴァンスへ、

マルセーユからピレネー山脈を越えてスペインへの旅、なつかしい!!

 

 

2012年9月 

“Alive and well in Paris” Phil Woodsand his Europian Rhythm Machine

 

今月の一枚はフィル・ウッズ(as)とヨーロピアン・リズム・マシーンです。

ザールフェルデンジャズフェスでアンリ・テキシュ(b)4を聴いたので,

もう一度このアルバムを聴きたくなった。

最初がいいですねえ。もうこれだけでじーんと来ます。

ロバート・ケネディの死を悼んでできたのだとか。

いままでのウォーム・ウッズからの大変身 !!

こんな情熱を持った人だから、パーカーの死後、

未亡人のチャンと結婚してしまう。

バックのヨーロッパの若い俊英3人がとても刺激的。

アンリ・テキシュはすっかり容貌が変わったが

息子(as)と共に今も健在。

聴いていてフランスジャズの奥深さを感じた。

この3人も昔来日したことがある。

アンリ・テキシュを聴けたことで3人ともライヴで

実際聴くことができた。

 

 

2012年8月 

“Where flamingos fly” Gil Evans

 

今月の一枚はギル・エヴァンスの“フラミンゴの飛翔”です。

最近殆ど聴いていなかったのだが、

ふと取り出して聴いた、これにしようと。

昔よく聴いたのでアルバムもけっこうある。

ギル・エヴァンスは1980年代(何年だったか)、

よみうりランドのイーストで聴いた。

マイルスバンドと一緒だったが、先行した

ギルのバンドの方がすばらしかったのを憶えている。

メンバーはその都度変わるけれど、どんなメンバーも

拒まないで自分のサウンドに入れてしまう。

コマーシャリズムに乗らない、経済的に恵まれない、

とても不運な人だったが、アレンジャーとしての

その才能は死後も高く評価されている。

エヴァンスの秘蔵っ子ビリー・ハーパー(TS)、

この人も自分の生き方貫いている、えらい!!

 

 

2012年7月

“The Trio” John Surman

 

今月の一枚は再びジョン・サーマンです。

2枚組アナログを最近また取り出して

聴いているのだが、ほんとにすごいです。

1943年イギリスのプリスマ生まれで、

イギリスのニュージャズを確立したBR、SS奏者。

この人が世界的に知られていないのはおかしい。

このアルバムにはフォトグラフィがいっぱい載っていて、

若い頃の写真が何枚か、とても興味深い。

20代の頃はけっこうやせていてマシュマロカット。

1970年頃、イギリスは優秀な人が沢山出てきた。

いつか彼はノルウェーのオスロに渡り、

永住権を取った。EMCの作品が多くなる。

人間的にひとまわりもふたまわりも大きくなって、

オスロでは今、Deep personと呼ばれている。

名声より実を取ったグレイトミュージシャンです。

 

 

2012年6月

“The Jazz Composer's Orchestra” Cecil Taylor

 

今月の一枚はジャズ・コンポーサーズ・オーケストラ。

ある雑誌のB級グルメジャズというコーナーに

セシル・テイラーが特集されていた。

毎回書いているライターもこのB級グルメジャズと

いうタイトルに大きくバッテンを書いて

超A級と書き直したいところだと言っている。

ジャズジャイアントの中で最もイノベーターで

誰も真似できないフリージャズの闘士。

セシル・テイラーがB級だったら世の中の

ジャズの9割5分はC級D級になって

しまうのではないか、と。

本当に同感、訂正してもらいたいところだ。

この“ジャズ・コンポーサーズ・オーケストラ”の中で

セシルのピアノはオーケストラの中に切り込んでいく、

鬼気迫る。終始一貫変わらない生き方。

ジャズの歴史の中で燦然と輝くジャズジャイアント !!

 

 

2012年5月

“Witchi-Tai-To” /Jan Garbarek-Bobo Stenson Ouartet

 

今月の一枚は“Witchi-Tai-To” というアルバムです。

(1975年ECM、ヤン・ガルバレグ・カルテット)

ノルウェーを代表するミュージシャンなのに

北欧のジャズフェスティバルに行ったときは

残念ながら聴くことができなかった。

有名なはなしに1963年コルトレーンが

北欧を訪れた時、当時16歳だった

ガルバレクの演奏を聴いてびっくりしたという。

「私と同じような音を出す少年がいる」と。

ノルウェーはジャズが最も遅れていたが

彼はコルトレーンをとことん研究して徐々に

頭角を現し今や北欧ジャズの中心になった。

何ともいえないソプラノサックスの音色すごい。

ボボ・ステンソンのピアノも理屈ぬきにいい。

難解だった70年台前後を通過して大ブレイク。

 

 

2012年4月

“Bird”Symbols /Charlie Parker 

 

今月の一枚はチャーリー・パーカーの“バード・シンボルズ”です。

知り合いの男性が系統的にジャズを聴きたいと言ったので

私のおすすめ20枚を聴いてもらうことにした。

最初は判りやすいアルバムからと思ってたが、

やはりパーカーを抜きにしては考えられない。

先ず最高だとされているダイヤル・サボイ時代を。

うーん、しばらくぶりに針を落とした瞬間から

全然すごい、神ががり的パーカーは1テイクから

完璧なのでメンバーがついていけないという。

他のアルディストと比べて同じ楽器だとは

信じられない分厚い音色、ちょっと聴いて判る。

34歳という若さで自爆としか思えない死。

私生活もめちゃめちゃだったが、それも含め

短い人生をやりたいことやりつくしていった。

最高潮のこのアルバム、何度も聴き続けてほしい。

 

 

2012年3月

“What's new ?” Gil Cuppini 

 

今月の一枚はギル・キュッピーニ・カルテットの

“What's new ?”です。

このアルバムは何年も前から聴いていて、

もうぼろぼろ、何気なく買ったのだが、

すりきれる程聴いている愛聴版です。

何といっても私のごひいきデュスコ・ゴイゴビッチ(tp)が入っているし、

その他バルネ・ウィラン(ts)、ジョルジュ・グルンツ(p)、

ギル・キュッピーニ(ds)等、ごきげんな人々と一緒です。

ゴイゴビッチは前に書いたかもしれない。

何年か前彼が、突然来店した時のことを思い出す。

ライヴが終わってすぐに現れた。とても紳士で謙虚な人。

ユーゴスラビア出身のゴイゴビッチは哀愁を漂わせた

素直な歌心いっぱいのハードバップを聴かせてくれる。

ミュンヘンに住んでいる彼、元気でおられるだろうか。

 

 

2012年2月

“ESTATE” Michel Petrucciani Trio

 

今月の一枚はミシェル・ペトロチアーニの“エスターテ”です。

本当に今、聴いてもすがすがしい、心がフワッとなる。

彼は体が不自由な人だったが才能に秀でていて、

34歳という短い生涯を駆け抜けていった。

最初に聴いたのは銀座ヤマハホールでの小さなライブで。

まだデビューして間もなくこれからというとき、

たしかスウェーデンのパレ・ダニエルセン(b)に

抱かれてステージに現われたことを思い出す。

しかしサウンドは力強くさわやかで明晰 !!

二度目に聴いたのはマウント富士ジャズフェスに

出演したとき(1986年第1回)。

彼が車椅子で現われると、さわいでいた聴衆が

水を打ったようにしーんとなった。

ミシェル・ペトロチアーニ、ジャズの歴史の中に燦然と輝いています。

 

 

2012年1月

“Selflessness” John Coltrane

 

今月の一枚はコルトレーンの”セルフレスネス”です。

(このアルバムの中のマイ・フェイバリット・シングス)

久しぶりにコルトレーンを10枚ほど聴いた。

“Coltrane”の中の“Violets for your furs”、

“I want to talk about you”の中の同曲、

初期の頃のみずみずしいあの音色、とてもいいです。

“セルフレスネス”(1963)の中に入っている

マイ・フェイバリット・シングスのライヴ盤、60年の同曲と

くらべてコルトレーンの1年1年の成長ぶりはすごい。

この過渡期アナログ盤の一面に録音された。

マッコイ(P)、ギャリソン(b)、ロイヘン(ds)(エルビンが麻薬で入院中)

えんえんと続く中、ロイヘンも必死でついていく。

時代と共に変わっていくコルトレーンの演奏。

晩年にたどりついた“Transition”のdear load、

真摯で静謐な人間性、厳しい探究心、永遠です !!

 

 

2011年12月

“Astigmatic”Krzysztof Komeda

 

今月の一枚は“アスディクマティク”クシシュトフ・コメダ(p)です。

北欧でトマシュ・スタンコ(t)他いろいろな人を聴いてから

だんだん東欧に関心が深まってきてしまった。

ポーランドはドイツに侵略されてめちゃめちゃに

されてしまった中、その中からひそかに立ち上がって

戦い取った自由の世界、その中で育った彼、

東欧ジャズを推し進めていった中心人物だったが

若くして亡くなってしまった(37歳だと思う)。

リラクゼーションより緊張感、つよい統率力、

全員が持てる力を出し切って若さあふれる

ひたむきで真摯な演奏に、胸が熱くなる。

“水の中のナイフ”、“ローズマリーの赤ちゃん”等々、

親友だったロマンスキー監督の映画も

コメダのサウンドが大きく左右していた。

自己のスタイルの革新を目指した最も進んでいた人。

 

 

2011年11月

“Black Fire”Andrew Hill

 

アンドリュー・ヒル(p)のことは昔から関心があった。

ブルーノートの社長アルフレッド・ライオンは、

一番無念だったのはアンドリュー・ヒルをスターに

できなかったこと、と言ったそうだ。

そういえば1986年マウント・フジ・ジャズフェスの

人選で、ライオンは強く彼を推薦していたそうだ。

彼は1960年代ブラックピープルのために

公的機関から助成金を得ることに奔走し、

ブラックピープルの尊敬の的だったが、70年以降、

多くのミュージシャンが金銭的欲望のために

離れていきはじめ、がくぜんとし、静かに去っていった。

彼のピアノはつんのめるようなスタイルと言った人がいたが、

するどいタイム感覚、ハーモニー感覚抜群。

ピアノのエリック・ドルフィーとも言われていたが‥

もっともっと活躍してほしかったミュージシャンです。

 

 

2011年10月

“I took up the Runes”Jan Garbarek

 

今月の一枚はヤン・ガルバレク “I took up the Runes”です。

実はこのアルバム最近知人からもらったもので、

ガルバレクは知っていたがしばらく聴いていなかった。

聴いてみてびっくり、この何ともいえない音色、しびれました。

コルトレーンが1964年に北欧ツアーをした時、

未だ16歳だったガルバレクの演奏を耳にして、

自分ととてもよく似た音を出す少年がいると言ったそうだ。

ノルウェーは北欧の中でもスウェーデンやデンマークに比べて

ジャズの発展が遅れていたと言われている。

しかし60年代中ごろ突如現われたガルバレクによって、

今、世界で最も注目される国となった。

このアルバムはインドのシャンカールにひかれた

コルトレーンのように、つよいインド指向が垣間見える。

一度聴いたら忘れられないソプラノサックスの音、

何回も来日しているので、ぜひ生で聴きたい。

 

 

2011年9月

“Dark Eyes”Tomasz Stanco

 

今月の一枚はトマシュ・スタンコの“ダーク・アイズ”です。

スタンコのことは昔から知ってはいたが、

モルデジャズフェスティバルで初めて聴いた。

彼はリーダーになるより、サイドで思い切り

ソロを取るほうが向いていると聞いていたが、

このアルバムは最近のリーダー作(2009年)。

統率力とか、リーダーの力量とか、そういうものは、

彼の場合いらないのではないかと思う。

モルデでは、もう吹ききって、力尽きて、

ひざまずいてしまう程だった。

あの姿、もう感動もの、ジャズってこれだなと思う。

テンションの高さ、純粋さ、ひたむきさ、妥協のなさ。

このアルバムは全員ポーランド人で固めており、ピアノが美しい。

ポーランドならではの青い炎と言われて。

大好きなミュージシャンになりました。

 

 

2011年8月

“Last Date”Eric Dolphy

 

今月の一枚は“ラスト・デイト”エリック・ドルフィです。

1964年6月2日のレコーディングだが、今聴いてもすごい。

なにしろノルウェーで逢ったミシャ・メルゲルべルグ(p)が

入っているので改めて聴き直した。

ドルフィは絶好調、どの曲も思い切り斬新、フレッシュ。

やはり永遠の名盤です。

ドルフィはミシャ・メルゲルべルグをとても気にいっていて

ミシャをミーシュと呼んだりしていたそうだ。

コペンハーゲンのカフェモンマルトルに出演の際は

リズムセクションにミシャのトリオを使いたいと思っていた。

しかし、願いもむなしくドルフィはベルリンで客死した。

ミシャはこの悲報を聞いた時、しばらく返事も

できない程にショックを受け、「もうだめだ」というなり、

電話を切ってしまったという。

 

 

2011年7月

“Alive and well in Paris”Phil woods

 

今月の一枚は“Alive and well in Paris”

フィル・ウッズと彼のヨーロピアンリズムマシーンです。

これからは年代関係なくよいと感じたものを書いていきます。

フィル・ウッズ(as)は50年代に“Warm Woods”という

何ともいえない青春を感じるアルバムを出したが、

ヨーロッパに新天地を求め大きく変った。

最近のアルバムがこれです。さっそうとしています。

ロバート・ケネディに捧げた“若かりし日”、いいですねえ!!

ジョルジュ・グルンツ(p)、アンリ・テクシュ(b)、ダニエル・ユメール(ds)、

ヨーロッパの新進気鋭を従えて(3人とも今は大ベテラン)、

幾つになっても衰えないほとばしる情熱‥

パーカーを尊敬するあまりパーカーの未亡人と結婚してしまう。

こんな烈しい生き方誰も真似できない。

 

 

2011年6月

“Dancing古事記” 

 

今月の一枚は“Dancing古事記”です。

急に日本のアルバムを持ち出して、これにしようと決めた。

1969年安保闘争の真只中、早稲田大学の講堂だと思う。

学生運動が最高潮に達していた頃のこと、

細かい事はよく判らないが、とにかくピアノが運ばれて、

バリケードの中、いつ別のセクトの学生が、

なだれ込んでくるか判らないという緊張感の中、

山下洋輔(p)、中村誠一(ts)、森山威男(ds)による

壮絶なピアノ演奏、何度聴いてもすごい !!

アジテーションの声が聞こえる、胸がどきどきする。

ジャズが時代と共に一体化していた頃、

このアルバムがどんないきさつで出来上がったか

そんなことはどうでもいい。

あの時代に生きてこられたこと感謝感激です。

貴重な歴史の一こまを残してくれた。

 

 

2011年5月

“Whatnew” デュスコ・ゴイゴビッチ

 

久しぶりにデュスコ・ゴイゴビッチ“Whatnew” です。

もうぼろぼろになるほど聴いていて

ケースも汚れてだいぶいたんでしまっているが、

最近また改めて聴けば聴くほどいいなあと思う。

リーダ-はギル・クッピーニ(イタリア・ds)なのだけれど

メンバーは国際色豊か。

デュスコ・ゴイゴビッチ(ユーゴスラビア・t)、

バルネ・ウィラン(フランス・t)、ジョルジュ・グランツ(スイス・p)等。

裏ジャケットのメンバーの写真、小さいが皆若い。

チャーリー・パーカーのコンファメイションが入っているが

デュスコは何のてらいもなくいつもと変らない。

いつか来店した時の紳士的なさわやかさ。

デュスコに関してはすてきな思い出ばかり。

 

 

2011年4月

“JOY” Karin Krog & friends

 

今月の一枚はカーリン・クローグの“JOY”です。

このアルバムはアナログで見つけたお気に入り。

カーリン・クローグ(Vo)、アリルド・アンデルセン(b)、

パレ・ダニエルセン(b)、スべイン・クリスティセン(ds)等、

バックも北欧のそうそうたるメンバー。

カーリン・クローグは1937年5月15日、ノルウェイのオスロ生まれ。

20代から北欧を中心に活躍。1964年の夏にはフランスの

アンティーヴジャズフェスティバルにも出演して、

しだいに世界的に知られるようになる。

カーリン・クローグの北欧的なねばっこいフィーリング、

スキャットシンギング、ニュージャズの新しい唱法、

いいですねえ !! 年齢関係なくいつまでも続けてほしい。

何年か前、六本木の小さなジャズクラブで聴いたことを思いだす。

ジャケットがすばらしい !! 彼女の魅力全開 !!

 

 

2011年3月

“The Trio” John Surman

 

今月の一枚はまたしてもジョン・サーマンです。

(日本版、コロンビア、アナログ2枚組)

ジョン・サーマンは1970年大阪の万博に

ヨーロッパジャズオーススターズの一員として、

ケニー・ホイラー、デイヴ・ホラント、ジョン・マクラフリン、

カーリン・クローグ等と共に来日した。

イギリスのニュージャズを確立したバリトン奏者。

1964年モントルージャズフェスで一躍脚光をあび、

国際的に知られるようになった。

彼はフリージャズだけではなく凡てのスタイルに

通じていて、現在はECMを中心に活動している。

彼のあのバリトンの音一度聴いたら忘れられません。

この重苦しいバリトンの音を今迄のバリトンとは違う

ろうろうとしたすさまじい音に。驚きです!

 

 

2011年2月

“November Cotton Flower” Marion Brown

 

今月の一枚はマリオン・ブラウンの“ノーベンバー・コットンフラワー”です。

60年代のフリージャズシーンで活躍したアルトサックス奏者、

マリオン・ブラウンは2010年10月18日フロリダ州

フォートローダテルのホスピスで他界した(79歳)。

62年ごろからフリージャズに親しみ、コルトレーンの

“アセンション”にも参加、80年代スティーブ・レーシー、

マル・ウォルドロンとも共演、90年に入って体調を崩し、

闘病生活に入っていたという。

今回の訃報を聞いて改めて取り出し聴いてみた。

ギンギンのフリージャズが多い中で何とあたたかく

胸に迫ってくるのだろう。

ジャケット一面のコットンフラワーがとても美しい。

マリオン・ブラウンの人柄そのままのように‥。

 

 

2011年1月

“How many cloud can you see” ジョン・サーマン

 

とにかくすごい!!

圧倒的にすごいです。

1969年録音、1942年生まれ、

ジョン・サーマン(bs)、マイク・オズボーン(as)、

ジョン・テイラー(p)、ハリー・ミラー(b)、

アラン・ジャクソン(d)

その他のジョン・サーマンのアルバム全部聴きたい。

今一番興味あるミュージシャンです。

 

 

2010年12月

“Another workout” Hank Mobley

 

今月の一枚はハンク・モブレーの“アナザー・ワークアウト”です。

このアルバムは前から聴いていてモブレーの中では

一番好きなアルバムです。何と言っても出だしがいい。

ちょっと言いようのない愁いを含んだ最初のフレーズを

聴いただけでぐーんときてしまいました。

何と言っていいかわからない。

太くたくましいテナーが多い中でモブレーのそこはかとした

かげりのような音に引き寄せられてしまう。

1985年のブルーノート再会パーティの夜、

永らく病気で引退同様だったらしいモブレーが

このパーティにこっそり現われた写真があった。

よれよれの帽子をかぶった元気のない姿憶えている。

二流テナーマンなんて言われているけれど、

こんな味のある、心に残る音、私は大好き。

その翌年に亡くなった。永遠の愛聴盤です。

 

 

2010年11月

“A turtle´s dream” Abbey Lincorn

 

今月の一枚はアビー・リンカーンの“タートル・ドリーム”です。

このアルバム、お店のお客さんが持って来てくれたものだったが、

最近聴きなおして、とてもいいなと思うようになった。

アビーは若い頃マックス・ローチと行動を共にしていて、

1960年代の公民権運動の最中、黒人意識を真っ向から扱った

“ウィ・インシスト”というすごいアルバムを作った。

(ジャケットが秀逸、膨大なジャズの歴史に残る一枚、

このアルバム年輪を重ねて今の心境をじっくりと

聴かせていて、とても心に残る)

マックス・ローチに寄り添っていたあの頃、その後離婚して、

一人のジャズシンガーとしてすばらしく成長したなーと思った。

マックス・ローチの葬儀には大手術をしたあとで

出席できなかったと聞いている。

アーティストとしての生き方、晩年になるほど魅力的。

今年の夏、亡くなった。80歳。

 

 

2010年10月

“The Believer”Billy Harper

 

今月の一枚はビリー・ハーパーの“ビリーバー”です。

ビリー・ハーパーは昔から知っていて何枚か持っていた。

70年代はじめ、ギル・エヴァンスがビリー・ハーパーを連れて

初めて来日した事を憶えている。ビットインのライブにも行った。

しかしこの80年のアルバムを改めて聴いて

自分の意思をはっきりと伝えようとする彼の

力強いテナーにしびれました。その時駄目でも、

何年かたって聴いてみるもんだなと思った。

もくもくと自分の道を掘り下げていた時期、

フュージョンなどには目もくれず信じる道一筋に。

えらい、感動しました。全曲彼のオリジナル。

“貴方はtureを信じていない、私は信じます、

本当のtureのために !!” この原文もすばらしい。

NYの教会で会った時の笑みをたたえていた姿、

頭に白いものが増えたよう、ずっと見守っていきます。

 

 

2010年9月

“Clifford Broun & Max Roach at Basin street”

 

たった4年間という短い間だが、マックス・ローチとのクインテット。

どれをとってもとてもすばらしいけれど、ソニー・ロリンズの入った

このアルバムは中でも最も充実した一枚だと思う。

クリフォード・ブラウンはモダンジャズの中で数少ない天才トランペッター。

なんといってもその輝かしい音色、何のよどみもなく、

思い切りよく始まるソロフレーズ、とても暖かくて美しい。

天才と呼ばれる人は何でこんなに早く死んでしまうのかと

驚くほど短い生涯、その短い生涯の中で凡てをやりつくして

永遠に歴史に残る完成度の高い音楽を創り上げた。

そして皆に愛されたその人柄、彼の死はあまりに衝撃的だ。

マックス・ローチはショックのあまり、立ち上がれなかったという。

凡てのミュージシャンやファンは早すぎる彼の死を悼んだ。

(同乗していたリッチー・パウエルのことは何も聞かされていないが)

ゴルソン作の“I Remenber Clifford”天国で本人が演奏してほしい。

 

 

2010年8月

 

今月の一枚はチャーリー・ミンガスのヨーロッパ演奏のビデオです。

ミンガスは聴いているようでしっかり聴いていなかったような気がする。

今回も何枚か聴いてみたけれど、結局いつか観た、

1964年4月エリック・ドルフィ(as)とと共にヨーロッパ遠征した時の

ノルウェイの大学講堂でのライヴ演奏のビデオにしました。

メンバーはジョニー・コールズ(t)、ジャッキー・バイアート(p)、

ダニー・リッチモンド(d)、何にもない簡素なステージ、

観客のほとんどは学生、ミンガスが観客に向かって

もうドルフィにソロは取らせませんと言っているのに、

今まで腰掛けていたドルフィは、立ち上がると延々とソロを拭きはじめる。

ミンガスのベースが怒ったようにごりごりと、エキサイティングな場面。

最後に観客に向かってペコリとおじぎをするミンガス。

横にいたドルフィの頭を抑えておじぎをさせるミンガス。

このあとドルフィはミンガスと別れてヨーロッパに残るが、

一行が帰国した2ヵ月後病死する。

 

 

2010年7月

“Kenny Burrell at the five spot cafe” 

 

今月の一枚は、ケニー・バレル(g)の“at the five spot”です。

ケニー・バレルは随分昔から知っていたし聴いていたが、

今回じっくり聴いてみようと思ってこのアルバムを取り上げた。

デトロイトで同郷だったトミー・フラナガン(p)と一緒に

ニューヨークに出た頃から暖かでブルージーな、しかし、

泥くさくない何ともいえないやわらかな音色だった。

山中湖のマウント富士ジャズフェスティバルの最後の年に

派手なオルガンのジミー・スミスと共演していたが

バレルのスタイルは時代に影響されることなく淡々としたもの、

謙虚な生きかたがそのまま音に現われていた。

テクニックをこれみよがしにしない彼の人柄がしのばれる。

端正な顔立ち、ちょっと見にはとても黒人とは思えない。

10年ぐらい前お店に来ていた男の子、バレルを聴いて本気で

ジャズミュージシャンになると言っていた。今どうしているだろう。

売れることばかり考えないで、ひたすら本物を目指して欲しい。

 

 

2010年6月

“Night Lights” Gerry Mulligan

 

今月の一枚はジェリー・マリガンの“ナイト・ライツ”です。

昔ラジオのジャズ番組で油井正一氏がこの中の一曲を

テーマ音楽にしていたのがとても印象に残っている。

ジェリー・マリガンはいいなと思いつついつか取り上げようと

思っていたが、さてどのアルバムにしようかと迷ったあげく

やっぱり一番有名なこの“ナイト・ライツ”にしようと思った。

バリトンサックスという楽器を演奏している人は少ないが

改めて聴いてみて重厚にぐっと迫ってくる中々の迫力。

ニューヨーク出身の彼だが西海岸のロスアンジェルスに

居を移して、編曲者としてバリトンサックス奏者として大活躍、

ジャズの歴史に残るアルバムをたくさん残した。

とても格好いい‥。生前一度聴いておきたかった。

この中には若き日のジム・ホール、アート・ファーマー、

チコ・ハミルトン、ボブ・ブルックマイヤー等そうそうたるメンバーが。

“黒いオルフェ”なんか今聴いてもとてもいい。いいものは残ります。

 

 

2010年5月

“Portrait of Sheila” Sheila Jordan

 

今月の一枚はポートレート・オブ・シーラ/シーラ・ジョーダンです。

ブルーノート1100シリーズで見つけた62年の作品。

初期のシーラの若々しい歌声が聴ける初アルバムです。

このアルバムには私の好きな“I´m a full to want you”が入っている。

この曲はインストルメンタルなものも多く、とても美しい曲。

シーラのこのバラード曲をもっと聴いていこうと思った。

このあと彼女はだんだん独特な表現世界に入っていくが、

本アルバムは未だそこまで行っていない。

いつか来店した熱烈なシーラファンの男性を思い出した。

シーラはベースとのデュオを好んで演奏しているが、

べーシストとの相性がとても大事だといっていた。

デューク・ジョーダンと別れて子供との生活のため、

タイピストをしながらひたすら歌い続けてきたという。

世間の成功に背を向けた純粋な生き方、

現役82歳素晴らしい!今度来日したら必ず行こう。

 

 

2010年4月

“to Sweden with love” The Art Farmer quartet feat. Jim Hall

 

今月の一枚は“スウェーデンに愛をこめて”です。

このアルバム25年位前に始めて聴いた。

このアルバムをすすめてくれた人、とてもよく憶えている。

今は自分の時間を持てる人が一番ぜいたくだと

思える時代になったがその人はその頃から

生活の糧に5時間働いて(クリーニング屋のアルバイト)

あとの時間は自分のやりたいことに使っていた。

フランス語を習ったり、コンサートに行ったり、

世界貧乏旅行に行きたいとも言っていた。

アート・ファーマー(tp)は同時代のクリフォード・ブラウン(tp)の

陰にかくれて今ひとつ人気が出なかったというが、

どうしてどうしてジャズ通なら誰でも知っている、

ハードバッパーとは一味違う知的なトランペッター。

協調性のあるジム・ポール(g)とも相性ぴったり。

スウェーデンがすっかり気に入って永住の地になったそうだ。

 

 

2010年3月

“DJANGOLOGY” Django Reinhardt

 

今月は“ジャンゴロジー”ジャンゴ・ラインハルト(g)です。

このアルバムは再会したステファン・グラッペリ(Vi)と

1949年1月から2月にかけてローマのクラブに出演していた時、

アマチュアの手によって録音されたものだそう。

御存知ジャンゴはヨーロッパを流し歩くジプシーの幌馬車の中で生まれ、

旅から旅への幌馬車に揺られて育った。

父はバイオリン、母は歌と踊り、しばらくして弟のジョセフが生まれる。

ジャンゴは第一次世界大戦が終わるとパリ郊外に落ち着き、

パリ中の音楽を聴き歩き、全くの耳学問でギターをかき鳴らした。

それなのにこの格調の高さ、フランスの香り‥。

シャルル・トレネ作シャンソン“ラメール”は何とも言えずいいです。

フランス映画“ルシアンの青春”の最初のシーンで、

主人公(ルシアン)が田舎道を自転車で走り続けていく間、

ずっとジャンゴの曲が流れていた。とても印象に残っている。

ジャンゴは早死してしまったが、ジャンゴの芸術は永遠です。

 

 

2010年2月

“JOY” カーリン・クローグ

 

今月の一枚はカーリン・クローグの“JOY” です。

このアルバムやっと手に入れてすごく嬉しい。

前からものすごく欲しいと思っていた。

彼女の前衛作品を聴きたくてディスクユニオンに

問い合わせたら、最近の不景気の故か今迄になく

親切にあちこち探してくれ、もう廃盤になってしまった

このアルバムをアナログで見つけてくれた。

久しぶりにディスクユニオンの別館LPコーナーに行った。

ジャケの若いカーリン・クローグ、なんて魅力的 !!

フリースタイルのスキャットシンキング、小鳥のさえずりのよう。

公私共に素晴らしいパートナー、ジョン・サーマン(bs)は

前衛からハードバップまで幅広く演奏するが、

彼女もデクスター・ゴードンと演奏したものなど、

フォービートもとてもいい。

六本木のライヴハウスで聴いたカーリン・クローグなつかしい。

(ちなみに本国ではカーリンではなくコーリンが正解らしい)

 

2010年1月

“Kenny Drew Trio” 

 

今月の一枚は、“ケニー・ドリュー・トリオ”です。

ケニー・ドリュー(p)は60年代ヨーロッパに渡ってから随分活躍した。

このアルバムは日本人が最も好きなハードバップ全盛の

50年代のケニー・ドリュー・トリオ、とても新鮮です。

ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(d)、皆いきいきしている。

70年代の“ダーク・ビューティ”もだいぶ評判になったが

今このアルバム聴き直してみて溌剌としていてとても判りやすい。

バド・パウエルの直系、黒人だけがもつブルース感覚をもとに

強力なタッチ、躍動的なリズム、白人にはないねばっこさ。

60年代以降のドリューは北欧がすっかり気に入って、

デンマークのコペンハーゲンに居を構えてデンマーク女性と結婚。

音楽も自然に変ってきて優雅になっていったようだ。

晩年日本が製作したアルバムが何枚かあったが、

日本人の好みに合わせたようでちょっとがっかりした。

それにしてもこのアルバムのジャケット、秀逸です。

 

2009年12月

“Meet Mr.Gordon” Bob Gordon Quintet

 

今月の一枚は“ミート・ミスター・ゴードン”です。

急に今は亡き立子山アナウンサーのこと思い出して。

ボブ・ゴードン(bs)のたった一枚のリーダーアルバム。

バリバリとバリトンサックスを吹くボブ・ゴードン、

若くして交通事故死してしまったのだが。

立子山アナウンサーはこのたった一枚の

リーダーアルバムが好きで、オリジナル盤で

大事に持っていると云っていた。

もう少したったらアメリカ西海岸に住んでいるという

ボブ・ゴードン未亡人をさがしてお墓参りしたいとも。

立子山アナウンサーらしいジャズへの熱い想い。

NHK505の司会をしていた頃はよく招待していただいた。

ダスコ・ゴイゴビッチの時も熱狂的なファンだと紹介して下さった。

なつかしい立子山アナウンサーの思い出として

あまり知られていないが知る人ぞ知るこのアルバムを選びました。

 

 

2009年11月

“Tribute to John Coltrane” Dave Liebman

 

今月の一枚はデイヴ・リーヴマンの“トリビュード・トゥ・ジョン・コルトレーン”です。

ニューヨークで聴いたデイヴ・リーヴマンのライヴが忘れられなくて。

帰ってきてから彼のアルバム、いろいろ探して聴いてみた。

87年に来日したこのアルバムをあらためて聴いて素晴らしいと思った。

ウェイン・ショーター(ss)、デイヴ・リーヴマン(ss)、リッチー・バイラーク(p)、

エディ・ゴメス(b)、ジャック・ディジョネット(ds)、

すごいメンバーが最初から燃えに燃え上がって

ミスターPC、アフター・ザ・レイン、ネイマ、インデア、インプレッション‥

コルトレーンを深く研究し尽くしたといわれるリーヴマンと

大物ショーター、2人のソプラノサックスの競演だが、

どちらがどちらと見分けるのも又聴きどころ。

熱く燃え上がるほうがリーヴマン、冷静で迫力の

あるほうがショーターかなと何度も聴きなおしてみる。

ライヴ・アンダー・スカイは何度も行ったが、このライヴは見逃している。

デイヴ・リーヴマン、もっともっと活躍してほしいミュージシャンです。

それにしても鯉沼ミュージックって企画がいいですね。

 

 

2009年10月

“Memories for Scotty” Don Friedman

 

今月の一枚はドン・フリードマンの

“メモリーズ・フォア・スコッティ”(1985)です。

このCDは随分前にいただいたものだが

今聴いてみて本当に貴重なアルバムだと思う。

大体フリードマンとラファロが一緒に暮らしたことがあるなんて。

ドン・フリードマンは“サークルワルツ”というアルバムで有名だが

その後何度も来日していて現在も活躍中。

ビル・エヴァンスの流れを汲んだピアニストの一人と云われる。

本人あまりうれしく思っていないかも知れないが

とてもデリケート、ドビュッシーのように絵画的だと云っている人もいる。

スコット・ラファロ(Scott La Faro)はビル・エヴァンスとの作品で

歴史に残る名盤を残してくれたが若くして事故死。

もっともっと生きていたらどんなべーシストになっていただろう。

アッパーウエストのフリードマンのアパートで暮らしていた頃(1961年ごろ)の

テープが発掘されたなんて、どんなに喜ばしいことか。

ジャケットの若い頃の二人、感慨深いものがあります。

 

 

2009年9月

“イージー・トゥ・ラヴ” ローランド・ハナ

 

今月の一枚は“イージー・トゥ・ラヴ” ローランド・ハナ(P)です。

このピアニストのことは前から気になっていたが、

70年代になって日本でも多く聴かれるようになった。

晩年ヴィーナスレコードから新譜がリリースされたが、

ヴィーナスレーベルのものは避けていきたいので、

ジャズが最も輝いていた1959年のこのアルバムを選んだ。

彼は1932年デトロイト生まれ、トミー・フラナガン、

バリー・ハリス、ケニー・バレル、等同郷の人が多い。

その後はフリーでいろんな分野で活躍した。

ミンガスグループやサド・メルグループを経て、

クラシックの世界にまでレパートリーを拡げ、

徹底したピアノ表現の可能性にこだわった。

2002年、70才でこの世を去ったがとても惜しい。

人なつっこい、とても気さくな人だったようだ。

スインギーなピアノアーチストの2枚目のリーダー作。

 

 

2009年8月

“With Love” Charles Tolliver big band

 

今月はチャールス・トリヴァー(tp)のビックバンド“ウィズ・ラヴ”です。

メグの寺島さんがこんなのどこがいいんだと非難していた。

私も最初はなんだこれはと思うほどだったが、

何回も聴いているうちにだんだん快感になってきた。

トリヴァーのソロが前面にフューチャーされたこの怒涛のようなオーケストラ。

午前中に音を大きくして聴くと何故か気持ちいい。

どんな聴きかたしてもいいけど何故か朝がいい。

チャールス・トリヴァーという人はスピリチュアルジャズの先駆者。

70年代ストラタイーストというレーベルをスタンリー・カウエルと立上げた。

2007年のグラミー賞ベストラージアンサンブル部門にノミネートされた。

ほんとに衰えを知らない活火山のような人だ。

ちょっとばかりラウンドミッドナイトのメロディが出てきたが、

そのあとは彼の独断場、めちゃめちゃすごい。

今年の1月このバンドで(ビリー・ハーパーも参加)来日した。

やはり聴いておけばよかった。残念 !!

 

 

2009年7月

“ジャズ・ギター” ジム・ホール

 

今月の一枚は“ジャズ・ギター” ジム・ホールです。

57年、パシフィックレーベルに吹き込まれたこの作品は、

ジム・ホールという稀に見る協調性を持ったミュージシャンの

本質的な魅力を捉えた有名なアルバムです。

しかし、彼はその頃はそれほどの人気はなく、

今のように注目されるような人ではありませんでした。

ジム・ホール(g)、カール・パーキンス(p)、レッド・ミッチェル(d)。

ドラムレスによってこの誰にもまねが出来ないという、

美しい音色、繊細な感覚、

スタンダートに見せる曲そのものを心から

慈しみ、楽しんでいる様子。

昔からちっとも変わっていない。

ジム・ホールのライヴは何回も聴いたが、

最近の充実振り、貫禄にはびっくり。

若手ギタリストの尊敬を一気に集めている。

それにしても現在の彼の大御所ぶりはすごい。

 

2009年6月

“Thelonica” Tommy Flanagan

 

今月の一枚はトミー・フラナガンの“セロニカ”です。

昔から大好きなピアニストの一人だった。

彼はリーダーアルバムが最初の頃は少なくて、

脇役に回ったものに多くの名盤が生まれている。

名盤請負人とまで云われたほど。

このアルバムは70年代エンヤで録音されたものだが、

尊敬するセロニアス・モンクと、ジャズメンにとても理解のあった

ニカ男爵夫人を合わせて“セロニカ”というタイトルに。

それにこのジャケットも2人をデザインしたものだし、

モンクとニカが歩いている写真とてもすてきです。

2人のことばかり書いてしまったが中身は文句なし。

トミー・フラナガン(p)、ジョージ・ムラーツ(d)、アート・テイラー(ds)。

ちょうど20年前になるがニューヨークのクラブで聴いたとき

どうしてもサインをもらえず今でもとても心残り。

代表作“オーバーシーズ”よりこちらのほうが好きです。

 

 

2009年5月

“Mod for Joe” Joe Henderson

 

今月の一枚はJoe Hendersonの“Mod for Joe” です。

ジョー・ヘンダーソンというと最初のヒット作“ページ・ワン”という

アルバムの“ブルー・ボサ”が大好きで、何度も聴いたものです。

この“Mod for Joe”はちょうど新主流派の新人達が出てきた頃、

今までのハードバップとは違った新しい感覚の演奏が聴ける。

ちょっと引っかかるような旋回をしていく、

厚みのある音、すぐにヘンダーソンだとわかる。

そういえば90年代斑尾ジャズフェスで彼の演奏を聴いた。

児山さんのMC、ベティ・カーター、イラケレ、凄かったのを思い出す。

一人で夜行列車での日帰り、あの情熱、なつかしい。

あの頃はいろんなライヴへ一人でよく出かけたものだ。

60年代はいろんなアルバムでジョーヘンを聴くことができたが、

アンドリュー・ヒルの“ブラック・ファイヤー”での演奏が心に残っている。

この“Mod for Joe”でのシダー・ウォルトン(p)、改めて見直した。

日本であまり人気のないシダー、もっとわかってほしいと思う。

 

 

2009年4月

“French Ballads” バルネ・ウィラン

 

今月の一枚はバルネ・ウィランの“French Ballads”です。

最近ヨーロッパのスタンダードを聴きたいと思っていて、

このバルネのアルバム、とても気に入ってます。

随分前、お店のお客さんが白人テナーでは

これが一番といっていたこと思い出す。

マイルスの死刑台のエレベーターのサントラにも、

参加していたフランスを代表する人気テナー奏者。

若い頃のバルネもいいけれど(人気盤“バルネ”)、

いろいろ人生経験も経た(一時はフリーに傾いた時期もあった)。

90年代赤坂の草月ホールで彼のライヴを聴いた。

幕間にテーブルが用意され、ワインを振舞われたこと覚えている。

育ちのよさ、いきなかっこよさに加えて、

晩年は人生の重みが感じられるようになった。

50代で早すぎる死を迎えてしまったけれど、

最後はパリのエスプリ一杯の、こんなアルバム残してくれた。

 

 

2009年3月

“スィンギン・マケドニア” デュスコ・ゴイゴビッチ

 

今月の一枚はデュスコ・ゴイゴビッチの“スィンギン・マケドニア” です。

ダスコと言われているが本当はデュスコだそうです。

このアルバムは昔から持っていたが久しぶりに聴いた。

ユーゴスラビア出身のデュスコは前からの大ファンだった。

10年以上も前、単身ふらっと日本にやってきて、

偶然NHKの505スタジオで聴いたときの感激。

司会のアナウンサーが私がものすごいファンだと知って

紹介してくれ、お店にまで連れてきてくれた。

何が好きってこのアルバムの2曲目の“オールド・フィッシャーマン・ドーターズ”

(年老いた猟師の娘たち)いろいろなアルバムで演奏しているが、

何度聴いてもじーんと来るのです。

ジャズのおもしろさって理屈じゃない。心に響くことだと思う。

今ヨーロッパのジャズにすごく興味がある。

日本ではデュスコはとても有名になってしまったが、

デンマークを中心にユーロジャズをもっともっと深めていこうと思っている。

 

 

2009年2月

“I`ve known rivers” Gary Bartz

 

今月の一枚はアイヴ・ノウン・リバース/ゲイリー・バーツです。

このアルバムをすすめてくれた人がいて‥。

前からゲイリー・バーツやファラオ・サンダース、

チャールス・トリバーには関心があった。

1973年のモントルージャズフェスティバルでのライヴ。

黒人意識開放にめざめたゲイリー・バーツ。

ラングストン・ヒューズの詩にインスパイアされたこのアルバム、

クラブ系でものすごい人気だそうだ。

ジャズからフュージョンへ移っていった時代、

強くてピュア、自由と平和を求め、

宇宙へ広がっていくような、そんなスピリチュアルジャズ‥。

今聴いても熱く訴えかけてくる。

70年代はお店を始めたばかりだが、

めちゃめちゃ追われる毎日、全然ジャズを聴いていない。

公民権運動を通じてジャズの世界から黒人の自立を訴えた、

マックス・ローチの“メンバース・ドント・ギットウィアリー”も聴いてみたい。

 

 

2009年1月

“Danish Jazzman” ベント・イエーデグ

 

このアルバムは私の好きなデンマークのミュージシャンの一人、

ベント・イエーデグのリーダー・アルバムです(1967年)。

最近CDと同時にLPも発売されたが、

中々手に入らなかったコレクター垂涎のアルバムだったらしい。

よくみたらゴイゴビッチやペテルセンも参加している。

サヒブ・シハブの“Danish Radio Group”(1965年)。

(これは私のとても気に入っているアルバムです)

ベント・イエーデグの“From Jadiig`s Galaxy”(1980年)。

通称“馬車”と呼ばれている幻のアルバム(1960年)。

(これはLPで持っている、ジャケットがすてき)

そして“Jazz Quintet 60”、デンマークジャズをもっと知りたい。

 

このアルバムの心温まる、イエーデグのテナーとフルート。

年代的に少しアメリカより遅れているというが、

とてもさわやかなハードバップを演奏しています。

 

 

 

2008年12月

“This is Hampton Hawes Vol.2” 

 

今月の一枚はハンプトン・ホーズの“ジス・イズ・ハンプトン・ホーズ VOL2”です。

このアルバムは昔からよく聴いていたけれど、

最近取り出して聴いた出だしの“You are the night and the music”という曲、

改めて明快でスインギー、力強くはずむ躍動を感じて、

文句なしに素晴らしいと感じた。

進駐軍の一兵士として日本に滞在した二年間、

日本のミュージシャンに多大な影響を与えたようだ。

このアルバムは帰米してすぐのもの(1956年)。

ところが或る雑誌に麻薬におぼれて

すっかり体調をくずしてしまったホーズの写真が載っていた。

不振な生活から逃れてヨーロッパを放浪中、

ノルウェイのオスロを訪れた時のものだ。

こんなに変わるとはぜんぜん別人のよう、愕然としました。

このアルバムのジャケットは、ちょっとチャップリンのようなメイクだけど、

自信に満ちている彼の最高作として知られる名盤です。

 

 

2008年11月

“The Ballad Of The Fallen” Charlie Haden

 

今月の一枚はチャーリー・ヘイデンの“戦死者たちのバラード”です。

このアルバムはチャーリー・ヘイデンの

“リべレーション・ミュージック・オーケストラ”の続編。

前作から13年もすぎた1982年の作品だが、

メンバーは殆ど変わっていない。

アルバムのメンバーの顔を眺めながら、つくづくすごいなーと思う。

カーラ・ブレイのすばらしいアレンジ、いいですねえ。

(コペンハーゲンで逢ったカーラの素敵だったこと)

そしてメンバー一人一人のこのアルバムにかける熱い思い。

頭の中にメロディーが浮かんできます。

戦争はどんなことがあってもしてはいけない。

それなのにどこかで未だ闘争が繰り返されている。

犠牲者はいつも決まって弱い普通の人々。

音楽を通じて世界の平和を訴え続けるヘイデン、

最近4作目が発表されたとのこと。

チャーリー・ヘイデンは今一番尊敬しているフェイバリッドべーシストです。

 

 

2008年10月

“Estate” Michel Petruciani Trio

 

今月は、ミシェル・ペトルチアーニの“エスターテ”です。

このアルバムは昔からCDで聴いていて、彼が亡くなったとき、

LPアルバムが沢山出回ったのでそのころ買い求めた。

買っておいてよかった。やはりCDよりLPで聴きたいから。

この表題曲一曲でもうすっかり好きになった。

80年代に彗星のように現れたペトルチアーニ。

34年間の短い生涯に凡てをやり終えて去っていった。

奇病といわれた病のために身長も体重も

子供のようだったけれど、手だけは大きくその演奏は力強い。

ビル・エヴァンスの流れを汲みながらもより明快なサウンド。

マウント富士ジャズフェスの時は車椅子で一人でソロを展開したが、

ざわめいていた観客が一瞬のうちに静かになった。

もう一回はもっと以前のヤマハホールでのライヴ。

パレ・ダニエルソン(b)に抱かれて登場したのを思い出す。

最近お店でおすすめはと言われた時は、

いつもこのアルバムをかけることにしている。

 

 

2008年9月

“Night Lady” Johnny Griffin Quartet

 

今月の一枚は、ジョニー・グリフィンの“ナイト・レディ”です。

アメリカを離れて2年後の1964年、

ケニー・クラーク(ds)、フランシー・ボラーン(p)という

ビックバンドのリーダー2人をサイドに迎えてのワンホーン作品。

(ベースはジミー・ウッド)

やっぱりグリフィンの死はとても心にひびきました。

最後まで変わらない、偉大なハード・バッパーだったと思う。

吹き始めるとバラードであることも忘れてがんがん燃えてしまい、

あとで気がついてしまったと思ったこともあったそうだ。

Little giantと言われたほど小柄だった彼、

ノースシージャズフェス(2005年)で見かけたときはひどくやせていた。

ウェスとの“フルハウス”、モンクとの“ミステリオーゾ”、

パウエルとの“ホットハウス”なども忘れられないが、

このアルバムが、やはり彼の代表作だと思う。

いつの時代が来ても、多くの人たちに愛され続けていく一枚でしょう。

 

 

2008年8月

“BASRA” Pete La Roca

 

急にこのアルバム書きたくなりました。

というのは先月パリで偶然ピート・ラロカのライヴを聴いたのです。

彼がブルーノートに残したリーダーアルバムはこれだけだが、

よくみるとけっこう1960年代に、いろんな人たちとアルバムを残している。

“ヴィレッジ・ヴァンガードのソニー・ロリンズ”、“スティーヴ・キューントリオ”、

アート・ファーマーの“ブルースをそっと歌って”などなど‥。

ピート・ラロカは1938年4月7日ニューヨーク生まれの黒人ドラマー。

コルトレーングループやチャールス・ロイドグループにいたこともあったが、

あまりにも個性的すぎて仕事に恵まれなかったようだ。

しかしパリで聴いた彼の演奏はすばらしかった。

“バスラ”や“ティアーズ・カム・ヘヴン”は彼が作った作品だが、

ライヴでやったのは、彼のフェイヴァリット、

“レイジー・アフタヌーン”。

ワンダフルと思わず話しかけてしまった。

この人が一時ニューヨークでタクシー運転手をしていたとは!!

 

 

2008年7月

“Viaticum” E..S.T 

 

6月14日衝撃的に亡くなったE.S.Tのピアニスト、

エスビョルン・スヴェンソン。

彼らの一枚を書きたくなりました。

アルバムを系統的に紹介したいと思っていたけれど、

今はその時その時感じたアルバムを

今月の一枚に選ぼうと思っています。

このアルバムは彼らの5作目となる。

2004年8月~10月、ストックホルムで録音されたが、

ヨーロッパ諸国であらゆる賞を受賞して、

これから躍進していくであろうピアノトリオだった。

このアルバムのタイトルにもなっている曲、“バイアティカム”

静かなピアノではない。

暗い森の中を突き進んでいくような、

熱く燃える、それでいて敬虔なひびき‥。

ずしんと心に残ります。

 

 

2008年6月

“In Europe” Miles Davis

 

今月の一枚は、マイルス・デイビスの“イン・ヨーロッパ”です。

実はこのアルバム、昔買ったもので何回も聴いているが、

最近になって“Recorded live at the Antives festival Juan-Les-Pins”

とジャケットに書いてあるのに気づいてびっくり。

私がどうしても一度訪れたいと思っていた

アンティーブジャズフェスティバルのライヴだったのです。

1960年ヨーロッパで一番最初に始まったジャズフェスティバル。

最初は確か、ミンガスグループだった。

日本ではあまり知られていないけれど、

南仏アンティーブの駅から一つ先のちいさな街、ジュアン・レ・バン。

そこで開かれる、50年近くのキャリアを持つフェスティバルです。

このアルバムの中味はスタンダード中心なのだけれど、

新しく入ったジョージ・コールマン(ts)を迎え、マイルス以下リズム陣も

がっちり一つになってすばらしい。

ジャケットのマイルスがすごくかっこいいです。

 

 

2008年5月

“プラクドニッケルのマイルス・デヴィス ” 

 

今月の一枚は、プラクドニッケルVOL..1・2 マイルスです。 

シカゴのジャズクラブ、プラクドニッケルでのライヴ。

1965年12月21~23日の録音。

どんなアルバムでも、何時?誰と?がとても知りたくなります。

特にマイルスの場合、どんどん進化していくので、

その時、その時の記録がとても重要になってくると思う。

新主流派と呼ばれた最強のメンバーとの最後のライヴ。

マイルスはこの年、左坐骨の骨膜炎にかかり大手術をした。

そのブランクを埋めるかのように全員一丸となって燃えに燃えている。

このレコーディングの存在は古くから知られていたけれど

何故かオクラ入りになっていて、結局陽の目をみるまでに

21年間もかかってしまったようだ。

エレクトリックに移行する直前のすさまじいアルバム。

トニーがいいですねえー。

ブローイングセッションから見事グループサウンドへ。

 

 

2008年4月

“Jazz Quintet 60 ” 

 

今月の一枚は、“Jazz Quintet 60 ”です。

サヒブ・シハブのデンマーク・ラジオ・ジャズグループ(65年)、

馬車のジャケットで有名なアルバム(61年)の間の、

63年のレコーディングだと思う。

この頃のデンマークのジャズ状況をもっと知りたかったので、

入手できてとてもうれしかった。

幻の馬車のアルバムとこれを聴き比べてみると

メンバーもほとんど同じだし、この頃から

真摯にフォービートジャズに取り組んでいたのだなと思う。

メンバーもよく知っている人達で、

ベント・アクセン(p)、アラン・ポッチンスキー(tp)、

ニールス・ペデルセン(b)、何と若いこと。

ロストポルド(ds)、ニールス・フスム(ts)

皆燃えていて、5曲目の“Ev´ry time we say goodbye”

すごくすてきです。

もっともっと輸入版入ってきてほしい。

 

 

2008年3月

“The Sound ” Stan Getz

 

今月の一枚はスタン・ゲッツ(ts)の“ザ・サウンド”です。 

もう50年以上も前のアルバム。

ゲッツといえば、ボサノバと思う人が多いけれど、 

40年代末から活躍していて、何度か窮地に陥ったこともあったが、

不死鳥のようによみがえって、その時代、時代を生き抜いた。

このアルバムは50年、51年のクールサウンドを築き上げたあと、

独立して自分のバンドを持って活躍し始めたころのもの。

クールから女性的な高音が徐々に丸みをおびた

男性的な音に変わっていく。

この中に入っている“ディア・オールド・ストックホルム”という曲

(スウェーデンの古い民謡)、すごく好きです。

マイルスやパウエルも演奏しているが、

これをジャズに取り入れたのはゲッツが最初だと思う。

50年代、薬欲しさにピストル強盗までしたとはとても思えない。

 

 

2008年2月

今月の一枚はモンマルトル・コレクション VOL1(デクスター・ゴードン ts)です。 

私の大好きなデンマーク、コペンハーゲンでのライヴ。

前にもこのアルバム、取り上げたかも知れない。

この中の“For all we know”というラブバラード、

情感に溺れやすいこの曲を、淡々とのめり込むことなく、

男心をじっくりと歌い上げている、とてもいい。

それにしてもこのライヴ、ものすごい熱狂。

67年といえばコルトレーンが亡くなった年、

本国アメリカのジャズ状況は混然としていたのに、

ヨーロッパではこんなにも熱い、ストレートなジャズが演奏されていたとは。

ビデオで見たこのライヴの様子、

燃えに燃えていた演奏中とは打って変わって、

終わったとたんにケニー・ドリュー(p)たちと、

すっかりリラックスして大声で冗談を云いあっている。

そこに居合わせたかったなー。

 

 

2008年1月

“Full House ” Wes Montogomery 

今月の一枚はウェス・モンゴメリー(g)の“フルハウス”です。

50年代、60年代はやっぱりジャズの黄金期だと思う。

この頃に永遠のアルバムがいっぱい残されている。

誰がなんといおうとこの辺を掘り下げよう。

1962年カリフォルニア、Thuboという店でのライヴ、

お客も入り乱れてとてもフレンドリーな様子。

大きな手、太い指でのオクターヴ奏法、

真っすぐ立って淡々と弾いている。

地方都市でたくさんの子供をかかえて、

昼は生活のため肉体労働をして、

夜は一晩中セッションをしていたというウェス。

やっと見出されて活躍した期間は

ほんの数年、早すぎた死が惜しまれる。

ジョニー・グリフィン(ts)、ウィントン・ケリー(p)のトリオもとてもいい。

私はリバーサイドの頃が一番好きです。 

 

 

2007年12月

“AFRICA” Pharoah Sanders

 

今月の一枚はファラオ・サンダース(ts)の“アフリカ”です。

最初の曲、“You´ve got to have freedom”、

いいですねえ。しびれました。

次の“Naime”、これが又コルトレーンと

聴きまちがえそうなバラード。すばらしい。

コルトレーンのスピリチュアルな精神をしっかりと

受け継いだ最後の一人。

よかった、こんなアルバムに出会えて。

強烈な個性、あのダーティな音色、

ファラオの風貌にぴったり。

一緒に弾きまくってるジョン・ヒックス(p)、

日本で聴いたことがある大好きなピアニスト。

握手したときの柔らかな大きな手、

これからと思っていたのに、早死にしてしまって。

このアルバムがクラブ系で受けているのがわかるような気がします。

 

2007年11月

“GEORGE LEWIS AT DIXIELAND HALL /(Dan Records)

 

このアルバムは、前にも取り上げたかもしれない。

ジョージ・ルイスという、デキシーランド・ジャズのクラリネット奏者のアルバムです。

特にこの中の、“バーガンディ・ストリート・ブルース”という曲。

私の一生の宝物です。

昼は苦しい肉体労働の沖仲仕として働き、

夜は敬虔な神への祈りの日々。

土のにおいのするスピリチュアルな演奏です。

もう亡くなっているが、1960年代に、東京でこの人の貴重なライブを聴いている。

何年か前、ニューオリンズのあの化石のようなブリザベーションホールで聴いた、

観光客用に古びた演奏をしていた老ミュージシャンたち。

ジャクソン広場で聴いたストリートミュージシャンたち。

もう都会に出て一旗あげようという気はさらさらなく、

ほんとに屈託なく演奏を楽しんでいた。

眼に浮かぶ、なつかしい‥‥。

この曲も自然葬でかけてもらうつもりです。

 

 

2007年10月

“Dear Lord(in “TRANSITION”)”John Coltrane(MCA Records)

 

今月の一枚は、ジョン・コルトレーンの“トランジション”。

このアルバムに入っている“ディア・ロード”という曲が好きで、

何度も何度も聴いたが、そのたびに胸にせまるものがあります。

(私の自然葬のときかけてもらうことになっている)

この頃のコルトレーンはフリーの世界に突入しつつあって、

洪水のように、烈しい嵐のように吹き続けたあとの

たとえようもない静謐な曲なのです。

ほんの5,6分だが心洗われる思い。

(ラブ・バラードではありません)

神をたたえ、神への道へ‥‥。

凡てを捧げて神のもとへ‥‥。

もう頭(こうべ)をたれてひれふすのみ。

彼は激動の末にこのような澄み切った心になれたのだろう。

何回聴いてもその度に感動する。

コルトレーンが到達した究極の“ディア・ロード” !!

 

2007年9月

“CHARLIE PARKER ON DIAL VOLUME 1” (東芝EMI)

 

今月の一枚はチャーリー・パーカー“オン・ダイアル・ヴォリューム1”です。

パーカーは私の原点。

パーカーが残した“チュニジアの夜”(Night in Tunisia)の名演として

有名な“フェイマス・アルト・ブレイク”(The Famous Alto Break)は

最初“チュニジアの夜”の没テイクだったが、

あまりにもパーカーのアドリヴがすばらしかったので

その部分だけ抜粋してこのアルバムに残されている。

天空を舞い上がっていく今生まれたばかりのアドリヴ、

何度聴いても、すごい。

有名な“ラヴァー・マン”(Loverman)も入っている。

この後すぐにカマリロ精神病院に入ることになるが、

彼の音楽はどんなに最悪の状態で

吹いたとしても、パーカーはパーカー。

ものすごく調子がいいときでもものすごく悪いときでも

そのすごさは変らない。

 

2007年8月

“MAX ROACH +4” (Marcury Records)

 

今月の一枚は“マックス・ローチ+4”にしました。(1956年)

最初のうちはヨーロッパの古いものを紹介していくつもり

だったのに、いつの間にか今書きたいと思ったものを

今月の一枚に選ぶようになりました。

マックス・ローチを書きたいなと思っていろいろ聴いたが、

ブラウニーが突然の交通事故で亡くなってから

まったく演奏する気を失ってしまったマックス・ローチが、

すばらしいメンバーを得て再出発したこのアルバム、とてもいいのです。

ケニー・ドーハム(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、

レイ・ブライアント(p)、ジョージ・モロウ(b)。

ジャケットが全員黒のタイ・スーツで、

マックス・ローチ以外は後を向いて立っている。

この辺にもブラウニーとの決別と、

リーダーとしての新しい闘志がうかがわれる。

知的で正確なスタイル、

黒人運動にもおおいに闘った。

ウィ・インシスト(我々は主張する)のジャケット、忘れられない。

 

2007年7月

“HOMMAGE” Andrew Hill

 

今月の一枚は、昨今亡くなったピアニスト兼作曲家、

アンドリュー・ヒルの“オマージュ”です。

彼は音楽だけでなくミュージシャンの生活向上にも

力を入れ、国への働きかけをして、

多くのミュージシャンがその恩恵に授かっていた。

しかし1963~66年の間のわずかな演奏活動ののち、

ブルーノートに何枚かのアルバムを残して

彼の消息はまったくわからなくなった。

70年代半ばにカムバックして、シカゴジャズフェスや

ノースシージャズフェスでも見かけるようになったが、

一部の人を除いて日本でもほとんど評価されないまま、

今年4月20日、74歳で亡くなった。

このアルバムはソロ作品(日本の製作)、いいです!!

これから本腰をいれて活躍できるだろうと思っていたのに‥。

最後の作品、“タイム・ラインズ”が残された。

 

 

2007年6月

“MINGUS JAZZ WORKSHOP FEATURING ERIC DOLPHY”  

 

今月の一枚はミンガス・ジャズ・ワークショップ・フィチャーリング・エリック・ドルフィーです。

ミンガスのアルバムはいろいろ聴いているが、

ある日ドルフィーの出ているこのビデオを見て、

すごく印象に残ったので、今月の一枚にした。

1964年4月12日、ノルウェーのオスロでのライブビデオ。

大学のホールだと思うが、ステージは右からジャッキー・バイアード(p)、

チャールス・ミンガス(b)、クリフォード・ジョーダン(ts)、ダニー・リッチモンド(as)、

エリック・ドルフィー(as,bd)、ジョニー・コールズ(tp)。

ミンガスってしゃべり方とベースの弾き方がとこか似ている。

MCでドルフィーはすぐいなくなってしまう、ソロは取らせません、

とかばんばん言われているが、そんなことどこ吹く風。

ドルフィーは立ち上がるとえんえんとソロを吹きまくる。

終わってステージを出る時も、

ミンガスはドルフィーの頭を押さえて、おじぎをぺこんとさせたり、

この映像とても貴重。

ミンガスのミュージックには欠かせなかったドルフィーとの関係が

興味深く残されています。

 

 

2007年5月

“STAN GATZ QUARTETS”  (Prestige)

 

今月の一枚は“スタンゲッツ・カルテット”です。

スタン・ゲッツといえばボサノバと思ってしまう人多いと思う。

しばらくゲッツから遠のいていたが最近

またいろいろ聴いてみて、50年前後のこのアルバムが

一番いいなと思うようになった。

村上春樹の本にスタン・ゲッツのことが書いてあった。

「繊細なブレスが奇跡的につむぎだす

天国の音」

麻薬欲しさにピストル強盗までしたという

エピソードなど、どん底までおちながら

不死鳥のようによみがえるこの生きざま、

やはり天才です。

最近「このアルバムを聴いていない人とは

ゲッツのことは話したくない」と書いてある文章を読んだ。

同感です。

 

 

2007年4月

“AFRICA” Pharoah Sanders/ (Timeless Records)

 

今月の一枚は、ファラオ・サンダース(ts)の“アフリカ”です。

1987年オランダのTimelessでレコーディングしたもの。

ファラオ・サンダースは“ビレッジ・ヴァンガード・アゲイン”という

コルトレーンのアルバムで知った。

いまだ若いファラオがコルトレーン・クインテットの一員として、

ヴァンガードの前で写っているジャケットが印象的だ。

1965年、コルトレーンが来日した時、記者会見の席で、

どうしてテナーを入れたのですか?という質問に、

「テナーが欲しかったのではない、ファラオの音楽が欲しかった」

と言ったそうだ。

コルトレーンの死後、どうしているのかなと思っていたが、

80年代後半、日本のクラブシーンで再評価されはじめた。

強烈な個性、特に “You´ve got to have freedom”は

大ブレーク。

ジョン・ヒックス(p)もすごい。別の機会に書きます。

 

 

2007年3月

“BIRD SYMBOLS” Charlie Parker

 

今月の一枚は、チャーリー・パーカーの“バード・シンボルズ”です。

ドリス・パーカー(3番目の妻)がおこした、

チャーリー・パーカー・レコードというレーベルから出ている。

最近写真を入れなくなったので、

黒地にパーカーの顔がアップで写っているジャケを

載せられなくて残念。

いま、またパーカーを聴き込んでいるが、

絶頂期の頃の有名曲ばかりを集めた

このアルバムを聴きなおし、

改めてそのすごさを感じた。

一瞬のうちにメロディーを崩してアドリヴへ。

めくるめく快感‥。

このアルバムの中の一曲、“ラバーマン”、

ぶあついアルトの音色がなぜか切なく感じた。

あんなに早く死を迎えたのも、むべなるかな。

 

 

2007年2月

“SATURDAY MORNING” Sonny Criss/ (XANADU RECORDS)

 

今月の一枚はソニー・クリスの“サタデイ・モーニング”です。

ソニー・クリスのアルバムは何度も聴いているが、

聴く度にじーんとくる。

パーカーの直系で共演しているアルバムもあるが、

やはり晩年のこの作品がいいなと思う。

一番好きなジャズミュージシャンはと訊かれて、

ソニー・クリスと答える隠れファンは意外と多い。

何もここまで吹かなくてもと思うくらい、

あつく烈しく吹きまくっていた50年代と違って、

翳りをおびたアルトの音は、

彼の歩いてきた人生そのまま。

クリスは初来日直前の1977年11月19日、

ロスの自宅でピストル自殺を果たした。

“エンジェル・アイズ”いいです。

 

 

2007年1月

“DEF TRANCE BEAT”(MODALTIES OF RHYTHM) 

 Steve Coleman & Five Elements

 

今月の一枚はスティーヴ・コールマンの

“デフ・トランス・ビート”です。

10年以上も前だろうか、

図書館で借りたCDの中に入っていて、

最初はテープにとって聴いていた。

ずっとなんとなく聴いていたのに、

最近になって俄然、よくなってきた、

何度も何度も聴いているうちに。

このビート感、気持ちいいフレーズの中に、

思わず体が動いてしまうようなリズム。

今ジャズ界で最も注目されている最先端、

ベルリンで偶然出会ってから、

やはり彼らはライブで聴くのが最高だなと思った。

 

2006年12月

“BLUE’S MOODS” Blue Mitchell/ (RIVERSIDE RECORDS)

 

2006年最後の今月の一枚は、

ブルー・ミッチェル(tp)の“ブルース・ムーズ”です。

このアルバム、皆にすごく愛されているアルバム。

最近聴きなおして、これがJazzの原点ではないかと思った。

“I´ll close my eyes”

“When I fall in love”            

とても素直にそのまま吹いている。

何度聞いても胸が熱くなります。

ウィントン・ケリー(p)、サム・ジョーンズ(b)、ロイ・ブルックス(ds)、

みんないい。

ブルー・ミッチェルは経歴も他のアルバムもあまり

知らないけれど、この一枚で充分。

普段着のままで吹いている横向きのジャケット、

ポストカードにした人がいたけどうなずけます。

とても素朴 !!

 

2006年11月

“THE JAZZ COMPOSER´S ORCHESTRA” Michael Mantler/ (TRIO RECORDS)

 

今月の一枚はマイケル・マントラーのJ.C.O.A(ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ)です。

このアルバムのこともっと早く書きたかった。

聴いてください!! すごい!!

細かいサウンドやフリージャズうんぬんはどうでもいい。

とにかくすごいの一語に尽きます。

1968年、ジャズが大きく動き出し、変っていった。

この時期のひとつの重要な記録だと思う。

特にセシル・テーラー、

めちゃめちゃ切り込んでいく彼のピアノは、

何度聴いても圧倒されます。

セシル・テーラーの最高傑作、代表作。

他にもオーケストラには、すごい人達がぞろぞろ。

ドン・チェリー、ファラオ・サンダース、カーラ・ブレイ、ラズウェル・ラッドetc‥。

チャーリー・へイデンは、オーケストラのベース奏者の中の一人です。

 

 

2006年10月

“THE MAGNIFICENT” Thad Jones/ (BLUE NOTE)

 

今月の一枚は鳩のアルバムで有名な

“マグニフィセント” サド・ジョーンズです。

50年代のニューヨーク、マンハッタンのど真ん中、

たくさんの鳩が舞い降りて、タバコ片手に立っているサドの足元に‥。

とてもいい雰囲気。

(実は彼の後に、鳩にえさをやっている女性のスカートやバックが

見え隠れしていて話題になった)

サドのこの代表作は、素朴で暖かい。

後年のサド・メル・オーケストラもずい分聴いたけれど、

私はワンホーンで吹くバラードがいい。

晩年ヨーロッパに渡って活躍しているあいだ、

女性問題であごをなぐられて、一時吹けなくなった時から、

トランペットへの意欲をなくしていったとか。

ハンク・ジョーンズ(P)、エルビン・ジョーンズ(ds)の真ん中、

ジョーンズ三兄弟として名をはせた。

 

 

2006年9月

“BARRY HARRIS  At The Jazz Workshop”/(RIVERSIDE)

 

前から聴いてはいたが、渋い内容なのにさらっと聴いていて、

大切なところを聴き逃していた。

でも実際にバリー・ハリス本人に会って、その人柄、音楽に対する情熱を

感じるほど、このアルバムがすごくいいなと思うようになった。

派手に弾きまくる人、目立とうとしていろいろやる人が多い中で、

終始一貫、そのスタイルは変らない。

(最近はワークショップなどで、どこへでも出かけていく)

控えめな中の一瞬の躍動感。

音楽を愛し、人間を愛して、ひたすら弾き続ける、

玄人好みのバド・パウエル直系のバップ・ピアニストです。

 

 

2006年8月

“LIBERATION MUSIC ORCHESTRA” Charlie Haden

 

今月は“リべレーション・ミュージック・オーケストラ”(69年)か、

“戦死者たちのバラッド”(82年)にしようかと迷ってしまったが、

一貫したヒューマニスト、チャーリー・へイデンの政治参加への

姿勢は変わっていないと思うので、第一作目にすることにした。

豊かさは危機の裏返しでもあり、豊かさを貪ることをやめ、

本当の現実に目覚めよう。

貧困や搾取のない世界、人種差別のない世界、

戦争や殺戮のない世界を目指して‥。

チャーリー・へイデンはすごい!!

その後、90年に第3作が出て、最近4作目が出たようだ。

とにかく最初のジャケットがかっこいい。

4作目は旗を持つヘイデンとカーラが入れ替わっているようです。

カーラ・ブレイを始め、参加者全員に脱帽。

 

 

2006年7月

“Mostly Ballads” Steve Kuhn

 

今月の一枚は“モーストリー・バラード”(スティーヴ・キューン)です。

スティーヴ・キューンはドイツ系のアメリカ人で

ビル・エヴァンスの流れを汲む、知的なピアニスト。

60年代トリオで“スリー・ウェイブス”などの代表作がある。

70年代、スウェーデンに渡り、ECMなどから何枚か、

個性的な作品を残している。

(“トランス”というアルバムに写っている彼、すごくすてき)

80年、帰国してから出したこのアルバム、

バラードばかりという作品なんだけど、

テネシーワルツ、ダニーボーイなど、

なんのてらいもなく、とてもすばらしい。

耽美派なんていわれているけれど全然

おぼれたところがない、さすがハーバード出身。

 

 

2006年6月

“OFF TO THE RACES” Donald Byrd

 

今月の一枚はドナルド・バードの“Off To The Races”です。

ドナルド・バードというと、後にファンク路線に走ったという印象が強くて、

何か好きになれなかった。

独断と偏見だけど。

なぜか最近この頃に戻って、もう一度主流といわれる

50年代末から60年代初めを聴いている。

お店の片隅でアルバムを聴いていると、

やっぱりジャズの楽しさってこの頃かなって思ってしまう。

その中の一人ドナルド・バード、ブラウニー亡きあと、

リー・モーガンと肩を並べてハードバッパーの

最前線に並んでいる。

ウェイン大学を経てパリ留学と、

知的センスを持った作編曲者でもある。

どうしてファンクへ行ってしまったのだろう。

サイドのウィントン・ケリー、サム・ジョーンズ、アート・テイラーが

ごきげんです。

最初の曲、“Love come back to me”が素晴らしい。

 

 

2006年5月

“STAR BRIGHT” Dizzy Reece

 

今月の一枚は、ディジー・リースの“スター・ブライト”です。

なぜかこのアルバムには表題曲の

“スター・ブライト”という曲は入っていませんが‥。

Duke Jordanの“Flight to Denmark”で聴けますが、

ディジー・リースのトランペットがものすごくいいのです。

ジャマイカのキングストン生まれ、イギリスに渡って活躍し始め、

その後ヨーロッパをあちこち回り、ニューヨークへも進出。

ブルーノートには3枚のリーダー作がありますが、

これは2枚目(1959年)。

生粋のハードバッパーにかこまれて

心にせまるものがあります。

日本ではあまり知られていないけど、

マイルスも絶賛したという、名トランペッパーです。

 

 

2006年4月

“NOW HE SINGS, NOW HE SOBS” Chick Corea

 

チック・コリアはあまり好きになれないピアニストですが、

この一枚は別です。

(もう一枚リターン・フォーエバーがありますが)

彼はフェスティバルというといつも顔を出して(ハンコックもそう)、

時代に合わせてころころ変っていくところ、私はだめなんです。

しかしこのごろはミュージシャンの本質を見きわめながら、

この作品はいいがこの作品はおかしいと、考えていった方が

いいのではと思うようになった。

チック・コリアは時代を先取りするのがすごく敏感、

どれが本当の彼なのか分からないが、おそらくどれも彼なのだろう。

この作品はハードバップなのだけれど、

エキゾチックなメロディーがとても斬新。

ミロスラフ・ビトウズ(b)、ロイ・へインズ(ds)がいいんですよ。

 

 

2006年3月

“CANDY”  Lee Morgan(1938~1978)

 

今月の一枚はいろいろ聴いたけど、ブルーノート盤

ワンホーンの“Candy”です。

リー・モーガンてやんちゃ坊主みたいで小難しくないし、

最近こういうシンプルでつややかなトランペットの音、

ものすごくいいと思うようになった。

最初の出だしから、理屈抜きにいい‥。

モダンジャズの最盛期58年ごろに、

私は戻っていくのかもしれない。

“サイドワインダー”とかが有名だけど、こちらのほうがずっと好き。

まだ19才とはとても思えない完成度、

この人も天衣無縫に生きた人だけど、

最後に愛人にピストルで撃たれて死ぬなんて

ほんとこの人らしい。

生きざまは死にざまに通じるもの。

 

 

2006年2月

“JACKIE‘S BAG”  Jackie mclean

 

今月はジャケットが気に入って(ジャケが良いと中味も良い)、

ジャッキー・マクリーンの“ジャッキーズ・バック”にしました。

B面の“Appointment in Ghana”やっぱりいいなと思う。(とても人気曲)

メンバーもとても魅力的だし、何といってもテーマのあと飛び出してくる、

マクリーンの一音にすごく一途なものを感じます。

天才でもイノベーターでもないけれど、

人間味あふれる、愛すべきハードバッパーの一人です。

第一回マウント富士ジャズフェスティバルで、

ウディ・ジョーとマクリーンが並んで“クールストラッテン”をはじめた時、

観客がウォーというどよめきと共に立ち上がり、拍手をした。

当のフロントの2人はびっくりしたようなとまどったような

顔つきだったのをよく覚えている。

そのくらい日本で好まれている曲が、向こうでは知られていない。

 

 

2006年1月

“Reaching Fourth”  McCOY TINER TRIO

 

今月はいまだ若々しかった頃のマッコイ・タイナー、

“リーチング・フォース”というアルバムです。

ジャズピアニスト、マッコイの名前は前から知っていたし、

それなりに一応聴いてきたつもりだったが、

いざ一枚となると迷ってしまった。

このアルバムはコルトレーンカルテットに入って、

ますますみがきのかかったマッコイの、62年のトリオ作品。

70年以降と違ってきらきらしていて、溢れるようなみずみずしさ。

コルトレーンカルテットもマッコイがいなかったら、

成立しなかったと言われているほどだが‥。

このアルバムはずいぶん探して、2枚も一度に買っている。

それにしてもノースシー・ジャズフェスで聴いたマッコイは、

生彩がなかった。

どうしたのだろうと思っていたら、案の定、

ジャズフェスの後すぐ倒れたと聞いた。

コルトレーンカルテットの生き残りとして

まだまだシーンで活躍してほしい。

 

 

2005年12月

“The Inflated Tear”  Roland Kirk

 

このアルバムのタイトル曲“溢れ出る涙”一曲で、

カークのこの、もの悲しいような音楽がじんときます。

それは人生の、深く暗い淵をのぞきみる思い。

カークは一人で、テナーとマンゼロ、ストリッチを一度にくわえて、

何ともいえない音を出す。

最初の頃は変人扱いされて、グロテスクジャズなどど言われたりした。

しかし、彼にしか現し得ない特異な世界を

描き出しているのです。

目が見えないというハンディは、そのまま耳のよさに‥。

“ドミノ”というアルバムでは、有名な“ドミノ”という曲が、

こんなにも心を打つ表現に変るのが驚きです。

 

 

2005年11月

“BLUES ette”  Curtis Fuller with Benny Golson 

 

カーティス・フラーのリーダー・アルバムになっているのだけれど、

“ブルースエット”という曲より、“ファイヴ・スポット・アフター・ダーク”

という最初の一曲目で有名になっているのです。

この曲はベニー・ゴルソンが作った、のちのちにまで残る代表作。

日本人好みのメロディーとブルースフィーリングあふれた

なんとも素敵なゴルソンハーモニー。

この曲の他にも、“アイ・リメンバー・クリフォード”、“キラー・ジョー”、

“ウィスパー・ノット”、“ブルースマーチ”etc‥。

みるからに過激なことなどしない、おだやかな紳士。

70台半ばだと思うが、ノースシー・ジャズフェスで見たゴルソンは、

とにかくすごく元気だった。

最近改めてゴルソン節にしびれています。

 

 

2005年10月

“NIGHT LADY” JOHNNY GRIFFIN 

 

“ザ・ケリー・ダンサーズ”と、どちらにしようかなと思ったけれど、

やっぱり、燃え上がりかたがすごい。こちらです。

“ケリー・ダンサーズ”のライナーノーツの中に、

グリフィンのことをとても面白く書いている一文があった。

「グリフィンのレコードをかける時にいつも期待するのは、

何といっても紋切型勧善懲悪劇的歓喜です。

結末は判っていながらも、遠山桜や葵の紋所の登場を

今か今かとどきどきしながら待つ、あの感じ。

上を下への大立ち回りを演じ、それを聴く我々は、

やんややんやの大喝采を送る」

こんな名文書けません‥。

ノースシー・ジャズフェスティバルで聴いたグリフィン、

とてもすばらしかった。

 

 

2005年9月

“WARM WOODS” (THE PHIL WARM WOODS QUARTET)

 

最近また聴き直していいな、と思っている

50年代、フィル・ウッズの“ウォーム・ウッズ”です。

特に最後の“Gunga Din”が好き。

なぜか青春のかおりがするのです。

切なく甘ずっぱい夏の日の思い出。

こんな気持、今も味あわせてくれるなんて、

すごく幸せ。

フィル・ウッズはパーカーの音楽に心酔しており、

パーカーの死後、未亡人チャンと結婚してしまったほどで、

すごく情熱的な人だと思う。

この曲を聞いていると、いまでも胸がきゅんとする。

こんな思いさせてくれれば、他には何もいらないとさえ思う。

(?ジャケットもすごくかっこいいです)

 

 

2005年8月

“THELONICA” 

 

ヨーロッパ系とアメリカ系を、隔月ごとに紹介していこうと思っていたが、

なかなか思うようにいかないので、これからはその時その時に、

良いと感じたものを紹介して行きます。

今月は日本のファンにものすごく愛されて、トミフラと呼ばれている、

トミー・フラナガンの一枚です。

このアルバムはジャズメンをすごくバックアップした、

ニカ男爵夫人とセロニアス・モンクに捧げた作品です。

フラナガンのいぶし銀のような魅力がいっぱいです。

人間的にも検挙で控え目なミュージシャンだったと思うけど、

晩年大物になってたくさんのリーダーアルバムを残すことができた、

とても嬉しいです。

何年か前、ニューヨークのJVCジャズフェスティバルで、

ハンク・ジョーンズと交互に出演していたが、休憩ですぐ側にいたフラナガンに

サインをもらいそこねてしまったことが、いま思うと本当に残念です。 

 

 

2005年7月

“SAXOPHONE COLOSSUS” 

 

ジャズ・ジャイアンツを取り上げてきた最後にソニー・ロリンズを、

入れないわけにはいかない。

日本でも未だにすごい人気、今年がもう最後といわれながら、

毎年毎年来日している。

今月の一枚は皆さんすっかりおなじみの、“サキソホン・コロッサス”にします。

モダンジャズの代表的名盤、歴史的名盤、

もう何も言うことなし。

豪快で男性的だけれど、その中に繊細で、

人間的な暖かさを感じる。

50年近く前の作品なのに、今聴いてもぞくぞくする。

建築家のO氏は京都の東大寺と、サキ・コロの、

“セント・トーマス”を重ね合わせていた。絶妙のmatching !!

このアルバムはジャズを知る原点だと思う。

 

 

2005年6月

“THE MONTMARTRE COLLECTION Vol.1” 

 

今月の一枚は、デクスター・ゴードンのモンマルトルコレクションVol.1に決めました。

このアルバム、デクスター・ゴードン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、

ニールス・ペデルセン(b)、アルバート・ヒース(ds)によるカルテットで、

デンマークのミュージシャンはペデルセンのみ、

でももう、それにはこだわらなくなった。

ゴードンもケニー・ドリューもコペンハーゲンをすごく愛していて、

この地でたくさんのアルバムを残している。

1969年、カフェ・モンマルトルでのライヴのビデオを見ると、

このライブハウスの中がよく写っている。

若いお客が多く真剣に聴いていて、薄暗く、ベン・ウェブスターの顔が見える。

ゴードンのヴォリュームある豊かな音色、粗野でハードだけど、

ゆうゆう迫らぬスタイルは圧巻 !!

演奏が終わると急にリラックスして、ステージに上がってきた観客からドリンクを受け取り、

ケニー・ドリューとふざけたりしている。

このライブハウスでたくさんの名盤が生まれたが、

今はもうない。

 

 

2005年5月

“ANOTHER WORKOUT” 

 

今月はジャズ・ジャイアントの中に入らないかもしれませんが‥、

ハンク・モブレー(ts)の“アナザー・ワークアウト”です。

派手に吹きまくる人もいいけど、こんな風に味のある人も私は好きです。

ジャーナリズムでは二流などといわれていますが、

この訥々と、かげりのあるテナーがいい。

思えば、楽器の音も、その人そのままを表していると思う。

ブルーノートが再開される前夜祭(アルバムにもなってる)で、

皆がにぎやかにやっているのに帽子をまぶかにかぶり、

地味な格好で、そっと遠くからどうしようかと迷っているような、

晩年のモブレーの姿を、ビデオで見たことがある。

 

 

2005年4月

“Short Cuts”Hans Ulrik

 

今月はまた隔月ごとのデーニッシュ特集です。

60年ごろから活躍しているベテランのアルバムを知りたいのだが、

まだまだ情報が少ない。

今月の一枚はコンテンポラリージャズ、ハンス・ウルリク(ts・ss)の

“Short Cuts”。

1999年Jazzpar comboとあるのですが、この年の賞をもらったのではなく、

Jazzpar Prizeのために演奏されたグループかもしれません。

この年のJazzpar賞の受賞者はマーシャル・ソラールですから。

(実はこのCDの解説に1990年から始まったJazzpar Prize Winnerが載っていました。

探していたJazzpar賞のことがこんな所でわかるなんて)

このアルバムは、デンマーク・ジャズシーンの重鎮ハンス・ウルリクを中心とした

強力ユニット。

ジョン・スコフィールド(g)、ラース・ダニエルソン(b)、ピーター・アースキン(d)

と、そうそうたるメンバー。

クリエイティブでありつづける現代のジャズ、なかなかです。

 

 

2005年3月

“STUDY IN BROWN ~Clifford Brown and Max Roach”

 

今月はクリフォード・ブラウンの“スタディ・イン・ブラウン”です。

こんな素晴らしいジャズジャイアンツのこと、書くのが遅れてしまって。

もうジャズファンなら誰もが認める天才トランペッター。

明るく張りがあって、つややかなサウンドはブラウニー(彼の愛称)の人柄そのもの,

凡ての人に愛されていました。

麻薬もやらないし,大学で音楽を学んだことといい、

頽廃的なジャズメンとは全く違うさわやかさ、

そのとおりの美しいフレーズ,輝かしいアドリヴ…。

彼は1956年6月26日早朝,雨にぬれたペンシルヴァニア・ターンバイクで、

乗っていた車が堤防に激突,わずか25歳の短い生涯を終えてしまった。

即死だった。

しかし(パーカーもそうだけど)彼のような天才は、短い期間に人生を倍速で生き抜き、

完璧な作品をたくさん残していった。

 

 

2005年2月

“ THE SHADOW OF BILL EVANS”

 

今月の一枚は隔月毎のデンマーク・ジャズ特集、

トーマス・クロウセン(p)、ニールス・ぺデルセン(b)、アージ・タンガード(ds)

のピアノトリオです。

トーマス・クロウセンは、今デンマークで最も活躍している、ピアニストの重鎮です。

ビル・エヴァンスに強く影響されながらも,

北欧の水々しさをたたえる,知的なタッチの持ち主。

コペンハーゲンの“モンマルトル・ジャズクラブ”にも、

デクスター・ゴードン・カルテットの一員として、よく出演していた。

“不思議の国のアリス”から始まるこのCD,

エヴァンスとは違う,ユーロジャズの真髄を聴くことができます。

ジャケットの3人の後ろに映る湖,いつか泊まったホテルの近くを思い出し,

すごくなつかしい。

やっとデンマークジャズのホームページを見つけたので、

ジャスパー賞のことなど聞いてみようと思う。

(真摯な国だからきっと返事くれます)

 

 

2005年1月

“CHAPPAQUA SUITE”

 

今月はジャズジャイアンツの中の一人、オーネット・コールマンの

チャパクァ組曲“CHAPPAQUA SUITE”にします。

オーネットってフリージャズだからむずかしい、分りにくいと思っていたけれど、

このアルバム、何回も聴いているうちにメロディがふぁーっと広がっていくようで、

とても好きになった。

確かこのアルバムは、フランス映画のために作られたもので(映画の題名はわからない)、

映画の内容にそって演奏しているのだろう。

だけど、オーネットのアルトサックスは、とめどなく、どこまでも続く…。

彼のデビュー作 “ジャズ来るべきもの”、大好きな “ゴールデンサークル”、

衝撃的な “ダンシング・ユア・ヘッド”、それらの作品とはまた違った面白さです。

よく見たらファラオ・サンダース(ts)も参加している…。

嬉しくなりました。

 

 

2004年12月

“FLIGHT TO DENMARK”

 

デンマークのジャズに興味を持って深くいろいろ知りたいと思っているが、

なかなか資料が見つからない。

インターネットで“The Danish Jazz Scene”というサイトを見つけて、今そこで調べている。

新しい人も続々出てきているようだが…。

やはりニールス・ペテルセン、マッズ・ビンディング、アレックス・リール、

ジョン・チカイなどの近況を知りたい。

このアルバムは日本でも有名。ステープル・チェイス・レーベルのページでも取り上げているが、

ほんと、おすすめのアルバム。

何度聴いてもたまらなくいい…。ジャケットも秀逸。

とにかくいいので、理屈抜きに、是非聴いてみてください。

このページはおすすめの一枚のコーナーなので、これからはデンマークに限らずいいと思うものを

紹介していくつもりです。

 

 

2004年11月

“MOTION”

 

今月はリー・コニッツの“MOTION”にしました。

このアルバムって,のっけからアドリブに入ってしまい,

聴き慣れた“You′d be so nice come home to”などは、

原曲がどんなだったか、もうわからないくらい。

でも驚くほどに引きずり込まれていく,すごいと思う。

リー・コニッツはよくアート・ペッパーと比較されるけれど、

アート・ペッパーの情緒性に対して,あくまでクールというか,

そういうものをそぎ落としてしまっている。

だからアート・ペッパーとは逆に一般の人には人気がない。

分かりにくいということらしいが、ジャズってどれもそうだけど、

もっと深く聴き込まないと分からない。

コニッツの一見そっけないような表現も実はそれが、

彼の個性のひとつなんだと思う。

人それぞれに表現方法があるように,年代によって心の動きが音に出てくる。

最近のコニッツはずいぶん変わったようだけど…。

しかしこのアルバムは,即興がすべてという彼のアルバムの中では一番だと思う。

 

 

2004年10月

“BENT JAEDIG FROM JAEDIG`S GALAXY”

 

デンマークジャズの資料がとても足りなくて,

一カ月おきにデンマークのアルバムを取り上げようと思っているのだが,

なかなか見つからない,でも続けます。

先月スイングジャーナルにデンマークのテナー奏者,

ベンクド・イエティグの訃報が載っていた。(享年69歳)

だいぶ前このアルバムを輸入版で見つけて,

とても嬉しかったのを憶えている。

今回取り出してじっくり聴いてみると,やはり,とてもいいです。

テテ・モントリュー(p)・ニールス・ペデルセン(b)・Bjame Rostvold(d)をフィーチャーしていて,

他にもアラン・ポッチンスキー(t),トーマス・クラウセン(p),マット・ヴィンティング(d),

リチャード・ボナ(tb&v、この人がボーカルで入ってくるなんて珍しい)…,嬉しくなっちゃいました。

デンマークのジャズを支えてきた人,ベンクド・イエティグ。

伝統的なジャズを真摯に守りつづけてきた,

ベンクド・イエティグに乾杯!

(サヒブ・シハブのDRJGのジャケにも大きく出ていましたね)

 

 

2004年9月

“THE MARTY PAICH QUARTET ~ featuring ART PEPPER”

 

アート・ペッパーのアルバムはいろいろ聴きましたが,

これが一番好きです。

まあ、“オーバー・ザ・レインボー”を聴いてみて下さい。

何ともいえない,胸が詰まってくるような美しさ !!

日本人は哀愁とかいうものを好むのかもし知れないが,

これはもっともっと深いと思う。

滅び行くはかなさ、とでも言えるのかも知れない。

人はペッパーの人生とからめて、自分の人生ともだぶらせて、

破滅型の生涯に共感を持っている。

でもカムバック後のペッパーより、この頃のペッパーのほうが断然いいと思う。

後期のペッパーは強くなろうとしたのではないかと思う。

すぐに崩れてしまうような弱さが彼の本質。

それがそのまま音になって…、ペッパーそのものです。

 

 

2004年8月

“ALEX RIAL UNRIEL”

 

隔月ごとにヨーロッパ(デンマークが中心)とアメリカ(ジャズジャイアンツ)のアルバムを、

私の好みで紹介してきた。

今月はデンマークのベテランドラマー、アレックス・リールの、

“ALEX RIAL UNRIEL”。

アレックス・リールは、すばらしいドラマー、デンマークを代表する人だと思う。

(横浜ジャズプロムナードに出たことがある)

以前紹介した、“The Kingdom”にも参加している。

このアルバムは、マイケル・ブレッカー、エディ・ゴメス、マイク・スターン等との競演だが、

さすが堂々たるもの。

デンマークのレーベルでは、ステープル・チェイスが好きなんだけど、

今は生産を中止している。

代わりにスタントレーベルが90年代から、北欧のジャズレーベルという殻を破り、

現代のトップレーベルとして歩み始めた。

これからいい作品をどんどん送り出してほしい。

デンマークのジャズの歴史をもっと詳しく知りたい。

日本ではスウェーデンのほうが有名だが、デンマークは、

かくれたジャズ王国だと思う。

 

 

2004年7月

“ERIC DOLPHY AT THE FIVE SPOT Vol 1”

 

ジャズジャイアンツの紹介もやっと七人目になった。

これからも味のあるミュージシャンのことを書いていけると思うと、

とても楽しみだ。

さて今月は、エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポット VOL1である。

もう皆良く知っている超有名な人気アルバム。

あの最初の、タターントタン、タターントタンというマル・ウォルドロンのイントロに導かれて、

ドルフィーの強烈なアルトサックスが現れる、すごい !!

いいですねえ、もう体が揺らいで来て胸が熱くなる。

これがジャズの楽しさというのでしょうか。

ドルフィーの音は“馬のいななき”なんて言われているけど、

彼自身は、ごく自然に自分の出したい音を探していたら、

こうなったのですと、どこかの雑誌で言っていた。

そう、ドルフィーはハードバップとフリーの間を揺れ動く。

43年前のレコーディングだけど全然色あせない。

でも、今、元気なのは、リチャード・ディヴィス一人になってしまった。

ああ、このライヴ、居合わせたかったなー。

 

 

2004年6月

Jaywalkin’ 

 

今月はデンマークのみならず、世界最高のベーシストと言われる、

御存知、ニールス・ぺデルセン(長い名前なので省略)です。

このアルバムは1975年、始めてのリーダーアルバムとして、

ステープルチェイスでレコーディングされたもの。

“ア・フェリジダージ”(黒いオルフェの主題歌)も、彼がギターを弾きまくるようでとても心に残るが、

私は“マイ・リトル・アンナ”が好きです。

とても親しみやすくてかわいい曲、きっと彼の最も愛する子供のために作った曲だろう。

ミュージシャンって愛するもののために曲が残せるからいいな。

(キューバのパキート・デ・リベラともこの曲をやっている)

16歳でバド・パウエルと共演もしている早熟のペデルセン。

その見事なテクニックに加えて、すばらしい歌心。

今はオスカー・ピーターソントリオで活躍中。

デンマークを忘れないでね。

 

 

2005年5月

“The Amazing Bud Powell”

 

今月は偉大なるジャズピアニスト、バド・パウエルです。

一ヶ月ごとにジャズ・ジャイアンツを取り上げてきたが、

これからもいろいろな人を紹介できるのが嬉しい。

この頃のバド・パウエルは麻薬に手を出し、持病でもあった精神障害もあり、

健康状態はきわめて不安定だったにもかかわらず、神がかり的なすばらしさ、

最高の輝きを放っていたと思う。

なんと表現していいのか、言葉には出てこないけど、

一瞬のひらめきに凡てをかける、異常なまでのすさまじさ !!

最後はボロボロになって生涯を終えたけれど、晩年のパウエルも涙なしでは聴けない。

このアルバムはバド・パウエルの残した最高の一枚です。

 

 

2004年4月

“REAL TCHICAI”

 

今月の一枚は何にしようかと迷ったが、

隔月毎にデンマークを続けてきたので、この一枚を選びました。

40年ぐらい前に、コンテンポラリー・ファイヴというすごく先鋭的なグループで

アーチー・シェップやドン・チェリーと“コンシーケンセス”というアルバムを作って世界を驚嘆させた

ジョン・チカイ(アルト・サックス)です。

彼は1936年4月26日、デンマーク・コペンハーゲンに生まれ、

62年にNYに出て65年に帰欧するまで、“NYC5”と“ニューヨークアートカルテット”を組織して

注目すべき成果を残しました。

70年以降は音楽教育活動に比重をおき、最近のニュースではカリフォルニアで活動しているというが、

地元デンマークでは、彼に一生困らないだけの研究費を与えつづけているそうです。

さすがデンマークの文化、才能のある人には惜しみないのです。

すばらしい。

 

 

2004年3月

“BIRD”SYMBOLS

 

今月はチャーリー・パーカーです。

前にもパーカーの一枚を紹介したことがあります。

ジャズジャイアンツのトップに書くべきだったけれど、

1955年3月12日がパーカーの命日なので3月に書こうと思っていました。

いろいろ聴いてみましたがやっぱりみんなよく知っている、“バードシンボルス”にします。

このアルバムはダイアル時代の貴重な吹きこみをセレクトして一枚にしたもので、

選曲・演奏面でパーカーのアルバム中トップに位置すると思います。

一気にテーマからメロディを崩してアドリブへと向かう、分厚いアルトの音色。

感情に流されるとか,癒されるとか、そういうこととは全然無縁の、

目眩くインプロビゼーションの世界。

いつ聴いても古くない、いつ聴いても感動する、

パーカーの音楽は永遠です。

 

 

2004年2月

“SWINGIN’FRIENDS”

 

2月のおすすめはデンマーク、ジャズパー・シロ・カルテットの

“SWINGIN’FRIENDS”にします。

もう一世代前の人たちを知りたいのだが,なかなか資料がなくて…。

このアルバムは1980年当時,すでにコペンハーゲンに移り住んでいた

ケニー・ドリューのプロデュースによるものです。

ジャスパー・シロは、現代のデンマークを代表するミュージシャン。

デクスター・ゴードンを思わせる、豪快でふくよかな演奏、気持ちよく、

心がふわっとなりいつまでも聴いていたい…、そんなアルバムです。

スウェーデンやノルウェイと違って、デンマークはハードバップ色が強いような気がする。

ジャズのノーベル賞“ジャズパー賞”を毎年開いたり、

日本では知られていないが、ジャズを一番真摯にやっている国だと思う。

 

 

2004年1月

“ALONE IN SAN FRANCISCO” 

 

サンフランシスコ名物のケーブル・カーにモンクが跳び乗っているジャケットが、中味と共にとてもすばらしい。

ジャケットが良ければ中身も良いというジンクスを私は強く持っているので、このアルバムを押します。

奇妙な行動、独特のタイム感覚を持つ、大らかな自然児モンク。

彼の音楽を聴いていると,どんなに時代は変わってもそこに合わせることなく,

自分の信じる音楽をやり続けていったであろう姿が目に浮かびます。

たとえ報われなくても,どこかで淡々と弾き続けているに違いない。

そんな(彼自身おもむくままの)生き方が私はとても好きです。

“リフレクションズ”、心に残ります。

 

 

2003年12月

“The Kingdom”

 

今月はデンマークのジャズを支えてきたベーシスト,

マッド・ビンティングのピアノトリオにしました。

これは91年のレコーディングで、たしかデンマークで毎年選考しているジャズパー賞というのがあって、

それに選ばれた作品だと思います。

とにかくエンリコ・ピエラヌンジィのピアノ,この人はイタリア人ですが,凄い !!

アレックス・リールもデンマークを代表するドラマー。

この作品のスケールの大きさ,おおらかさ,そして静けさ,デリケートさ…。

これは何度聴いても震えます。

心にいつまでも残る一枚です。

 

 

2003年11月

“MILES IN BERLIN”

 

7月のコルトレーンから始まって、ジャズジャイアンツの一枚を隔月毎に

おすすめとしていくつもりだが(隔月はヨーロッパのジャズでいきたい)、

今月は MILES in Berlin です。 

マイルスが待ちに待ったウエインショーターが、クインテットの一員となったはじめてのアルバム。

サイドの3人と共に、ライブならではの、マイルスのホットなプレイがすばらしい。

個人的には今、トニー・ウィリアムスのドラムにしびれているのだけれど。

ショーターをはじめ、現在第一線で活躍している人たち(トニーの死は早すぎる)の、

新主流派時代の代表作だと思う。

同じメンバーのプラグドニッケルでのライブもすごい !!

びっくりです。

 

 

2003年10月

“JAZZ JOURNEY”

 

今月は“馬車”の愛称で呼ばれている、この1961年のアルバムを選んでみた。

デンマークが好きだから,このアルバムが澤野工房から出た時はすくに買った。

私はコレクターではないので,集めることに喜びを感じている人の気持はよくわからないが、

入手しにくかったから価値があるとも思えない。

ジャケットいいですねぇ。

アルバムも、このジャケットのようにとっても暖かでほのぼのとした音楽。

このころのデンマークの風景がそのまま現れているよう。

数年前に私が行った時のような、あのほほえみの街を思い出す。

こんなのが,ジャズの原点にあってもいいのではないかと思う。

激しいのもいいけれど,こういう優しいジャズももっと聴きたくなった。

 

 

2003年9月

“UNDERCURRENT”

 

9月15日はビル・エヴァンスの命日。亡くなって23年になる。

来日を控えて,チケットまで売り出されていたのに,本当に突然だった。

ジャズを聴き始めたばかりの人もすぐに好きになり、

何十年も深く聴いてきた人でも聴き直すたびに深く感銘を受ける…。

エヴァンスの魅力は、年と共に深くなるばかりです。

 

最初からインプロビゼーションに入っていく“マイ・ファニー・バレンタイン”、

ギターのジム・ホールとのインタープレイは,何度聴いてもぞくぞくする。

 

日本人のピアノトリオ好きの原点、今までのピアノトリオの流れを変えた、

リリシズムのエヴァンスなんて言うけれど、

本当はもっと硬質な魅力がある。

世の中がどんなに変わっても,彼の音楽は聴き継がれていくだろう。

 

 

2003年8月  

“SAHIB SHIHAB and THE DANISH RADIO JAZZ GROUP”

 

最初のペテルセンのベースでぐっときてしまった。

なんと強烈なインパクト、とにかくすごい。

1965年の録音だというが、今聴いても胸が熱くなり、体がふるえてしまう。

サヒブ・シハブという人は、ビバップの洗礼も受けていて、

たしかパーカーとも一緒にやったことのある人だと記憶していたが、

ヨーロッパでこんなに活躍していたとは。

名前からして中東の人ではないかと思うが、ここ数年ヨーロッパのクラブシーンで若者をとりこにしているそうだ。

アルバムでは他に、アラン・ポッチンスキー、パレ・ミッケルボルグ、ベント・ジャーディクなどの若い頃の顔が見える。

最近聴いたアルバムの中では圧倒的な素晴らしさ、この鮮烈さ。

(おととし横浜ジャズフェスティバルで現在のDANISH RADIO JAZZ GROUPを聴いたが、パレ・ミッケルボルグがリーダーだった。 ヨーロッパでは有名)

 

 

2003年7月 

“SELFLESSNESS featuring MY FAVORITE THINGS” 

 

7月17日はコルトレーンの命日なので、数多い作品の中から私の好きな一枚 “セルフレスネス” にしたいと思う。

有名な “マイフェイバリットシングス” が最高。

アトランティックレーベルに吹き込まれたこの曲の初演と比べてみて、とても力強く自信に満ちている。

同じ曲を何度も演奏しているが、そのたびに違ってくる。

同じ物は生まれない。

そこがジャズの面白さだと思う。

ちなみにドラムがこの時だけロイ・へインズに替わっているが、エルヴィン・ジョーンズは麻薬で入獄中とのことだ。

そして、聖者のような人格のコルトレーンが神に捧げた曲、“ディアロード”。(トランジジョンに入っている)

胸にぐっと来る。