1989年6月から7月の初めにかけて、ニューヨークJVCジャズフェスティバルに行った。
コンチネンタル航空シアトル経由でニューヨークへ。友達の石田君(美術の勉強のためニューヨークで暮らしていた)が、空港に迎えに来てくれていた。さっそくその足で、“ファットチューズディ”(今はもうない)に直行して、エディ・ゴメスを聴いた。ここでビル・エヴァンスの最後の演奏があったのかと思うと、想いもひとしお。
リザーヴしておいたホテルでひとまず落ち着き、翌日から昼はあちこちでやっているフェスティバルへ(チケットはあらかじめ選んで、石田君に買っておいてもらっていた)、夜はライヴハウス巡りとなった。
リンカーンセンターでは、マイルス・デイビズとウィントン・マルサリスの共演を聴くことができた。きくところによると、以前、マイルスはウィントンに「俺の前で吹くな」と言ったとか。だからこんな共演なんてありえないと、もう大感激だった。
それから、ジャッキー・バイアードのピアノソロ。あの時、聴いておいてよかった。小さなホールだったが、彼独特のスラングが飛び出して(私には分らない)地元の人々は大笑いしていた。彼が、射殺されるなんて!
そして、トミー・フラナガンとハンク・ジョーンズのWコンサートに。ハンクが演奏している間、私のすぐ側にトミ・フラが休憩に来ていたのに、勇気がなくてオートグラフィをもらえなかった。今思い出しても、とても残念。
タウンホールではトランペットのクラーク・テリーとそのフレンドという内容で、クラークの人柄の故か、いろいろな人がゲストに出ていて楽しかった。(ケニー・バレル、オスカー・ピーターソンなど、その他大勢いたが忘れてしまった) 観客も年配のカップルが多く、明るくフレンドリーなクラークと共にとても楽しんでいた。
その他、ヴィレッジ・ヴァンガード、ブルーノート、スイートベイジル(もうなくなってしまった)には二回ずつ行ってしまった。
今は無き“ブラットレイズ”(とても素敵な店)にも行き、ほんとうにジャズ漬けの毎日で、大満足!
余談だが、ニューヨーク滞在の後半になって宿を変え、“ファットチューズディ”のすぐ側のアパート(たしか3番街17丁目)に移ったのだが、そこがものすごいオンボロ。4Fの部屋に行くのにエレベーターはとても古く怖くて乗れない(1Fは危ないから泊まれないと言われた)。部屋にはドレッサーとベットがあるだけで鍵もよくかからないという代物。こんな体験もしてみてよかったと今は思えるが…。
韓国風デリカデッセンで買ったコーヒーとハルサメサラダを持って、近くの公園へ。たまにやっている老人のディキシーランド・ジャズを聴きながらぼんやりしていた。ああ、とてもなつかしい。
一人でセントラルパークやリトル・イタリアに行ったこと、いやがる石田君と自由の女神に行ったこと、ハーレムや中華街での食事、ジョン・レノンの最後の場所、貿易センタービルの展望台、国連ビルの1Fで絵葉書を買ったこと、一日がかりだったメトロポリタン美術館、近代美術館……もう書ききれないほどの思い出。
今年9月11日の貿易センタービルの同時多発テロには、ものすごい衝撃を受けた。
だが、ニューヨークは何があっても滅びないだろう。
私はそう信じる。
誰かが、「沼から発生する蚊のように、沼そのものの根源を断たない限り、蚊を一掃してもテロ行為はなくならないだろう」と言っていたが、私もそう思う。
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